NIKEはアジアの子供を搾取したのか?

 アフリカの多くの国々が最貧国です。アジアにもカンボジアや北朝鮮のような最貧国があります。南米にもボリビアのような非常に貧しい国があります。世界の最貧国では生まれてくる赤ちゃんは劣悪な衛生環境で次々と死亡します。飢饉で国民が餓死することもあります。また、独裁政権による虐殺や国内での内紛も絶えません。

 こういった貧しい国々は世界の先進国に搾取されているから貧しいのだという考え方もあります。以前、NIKEのアジアの工場で未成年労働者がいたことが大問題になったことがありました。そこでもNIKEのような多国籍企業が途上国を搾取しているとのイメージができあがりました。

 しかしそういったことは、じつは事実とまったく反しています。多国籍企業に比較的安い賃金で雇用されることが「搾取」というなら、今、世界で急速に成長し豊かになっている発展途上国はむしろ搾取されているからこそ豊かになっているのです。インドや中国、最近ではベトナムなどは、安い労働力が目当ての多国籍企業がどんどん進出したからこそ先進国の技術や資本が移転して豊かになっていったのです。

 その点、アフリカや東南アジアの最貧国はこういったグローバルな市場経済に組み込まれず、取り残されているからこそ貧しいままなのです。

真実がわかる簡単な思考実験

 ここで簡単な思考実験をしてみましょう。たとえばアフリカの最貧国のひとつかふたつが明日この地球上から消滅してしまったとしたらどうなるのでしょうか? 

 一部の先進国や多国籍企業が搾取しているからこそ、これらの国々は貧しいのだとすれば、搾取される人々がいなくなったら何か困りそうなものです。想像力を働かせてよく考えてみてください。

 そうです。アフリカの最貧国がひとつ明日なくなっても、世界の先進国もグローバル経済もまったく何の影響も受けないのです。つまり貧しさの一番の理由は、世界の貿易体制に組み込まれていないことなのです。

 最貧国で生まれても養子や孤児としてアメリカなどの先進国で育ち成功する個人もたくさんいますから、最貧国が貧しいままなのはそこの国民のDNAのような生物学的問題だというのもまったく的外れでしょう。

 実際問題として最貧国がなかなか這い上がれないのは、一にも二にも行政や司法が腐敗しているからです。一部の政治家や役人や軍人が自分やその身内だけで富を独占し、自分たちの権力を脅かしそうな自国民を見つけては次々と虐殺しています。市場経済とはじつは大変デリケートなもので、しっかりとした法治国家でないと機能しないのです。

 ちょっと考えてもらえばわかると思いますが、人のものを盗んだり、約束を簡単に破ることが当たり前の世界では、貨幣を使った市場経済はうまくいかないことが容易に想像できるでしょう。そういった国ではマフィア経済か、独裁者が統制する経済しか生まれません。