プレゼン、会議、打ち合わせに効果抜群! 仕事に効く「図の使い方」。
企業研修、ワークショップの実績多数! ニューズピックスのクリエイティブ統括者であり、どんなものでも「図」にする図解オタクの櫻田氏の新刊、『図で考える。シンプルになる。』が発売! 発売4日で重版も決まり、話題になっている。

WIRED、ハフィントンポストといったメディアからのデザイン依頼に加え、コンサルティングファームや広告代理店で「図解思考」「デザイン×図解」などのテーマで研修をこなす本格派は何を語るのか。その秘伝の秘を、本連載ではあますところなくお伝えします。(構成:中村明博)

頭がよくなるシンプルトレーニング「桃太郎のあらすじ」を図で説明してください
頭がよくなるシンプルトレーニング「桃太郎のあらすじ」を図で説明してください櫻田潤(さくらだ・じゅん)
ニューズピックス インフォグラフィックエディター。仕事に必要な知識を身につける過程で、「モノゴトを深く理解したい」という欲求を持つようになり、そこから本やテレビ番組の要約を「1枚の図」にまとめる習慣が生まれる。作り上げた図を、自分の個人サイト「ビジュアルシンキング」にアップしたところ、従来の図解にデザインの考え方を反映させた手法が話題になる。

たった1枚の図に、
あなたの“考える力”が表れます

 「図解が趣味です」

 はじめて会う人にこう言うと、不思議そうな顔をされます。確かに変わっているかもしれません。でも僕は大真面目なのです。

 趣味として、ドラッカーの『マネジメント[エッセンシャル版]』を50枚の図にまとめたことがあります。他には、テレビ番組の「カンブリア宮殿」の内容や、世界的な講演会を主催する団体「TED」で公開中のプレゼンなど、さまざまな対象を図にしてきました。

 その根本にあるのは、モノゴトを「理解したい」という欲求でした。「普遍的な考え方」「うまくいっているビジネスの秘密」といったものを図にまとめ、自分なりに咀嚼します。図のフォーマットを借りて、知識が体系的にまとまっていくのが面白かったのです。

 そうして形にした図の一部は、2010年に立ち上げた個人サイト「ビジュアルシンキング」の中で公開しています。「図で考える」「図を公開する」ことを始めてしばらくすると、「わかりやすい!」「面白い!」という反響を多くいただくようになりました。

 すると今度は、コンサルティングファームや広告代理店から、企業研修、ワークショップの依頼が入るようになりました。テーマは、「図解力アップ」や「プレゼン資料の作り方」です。

 研修が終わると、「こんなふうに体系的に教わったことがなかった」「図解の本をたくさん読んできたけど、身につけられなかった。でも、これならできそう」といった感想をいただき、さらに「自分の部署のメンバー向けにも改めて開催してほしい」と依頼されることもありました。

 1つの会社のいろいろな部署で、研修を複数回実施していくうちに、図のスキルは特定の業務に限らず、幅広いシーンで求められているのだと感じました。

あなたならどんな図にしますか?

 研修の冒頭では、頭の体操を兼ねて、あるお題を図にしてもらっています。そのお題は「桃太郎のあらすじ」です。
「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。おじいさんは山に柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に……」から始まるあの話。

皆さんに図解の手ほどきをする前にとり組んでもらうと、下図になりがちです。

頭がよくなるシンプルトレーニング「桃太郎のあらすじ」を図で説明してください

 登場人物はそろっているし、時系列も正しい。物語の「あらすじ」も均等に盛り込まれている。にもかかわらず、わかりにくい感じがします。すべてを盛り込もうとした結果、複雑になってしまって、肝心の「あらすじ」がよくわかりません。直感的ではないのです。しかし、下図ならどうでしょうか。

頭がよくなるシンプルトレーニング「桃太郎のあらすじ」を図で説明してください

 「桃太郎の歩み」という視点でまとめた図です。登場人物や時系列は先ほどの図とほぼ同じ。しかし主軸が明確で「あらすじ」がひと目でわかります。知らない人に説明するのも簡単です。

ポイントを絞り、浮かび上がらせる

 図で考えるときは、大事なところが浮かび上がるようにします。それには内容を理解し、どこにポイントを置くかを考え抜く必要があります。上図では、「桃太郎の歩み」を主軸にしながら、印象的な2つのエピソード(1.川での出会い、2.きびだんごのエピソード)をとり上げています。

 考え抜かれた図は、あとから見直しておさらいに役立つだけではなく、誰かに要点を話すのにも使えます。自分の理解だけではなく、相手の理解も助けるのです。

 このお題を最初にやってもらう目的は1つ。人に何かを伝える際には「視点」が必要だと知ってもらうためです。すべてを盛り込むと、どんなテーマであっても複雑になってしまいます。多くの人はポイントだけを知りたいと望むはずです。それには、シンプルにしなければなりません。

 先ほどの問題に戻りましょう。「桃太郎の歩み」という視点を加えることで図がシンプルになりました。同じテーマであっても、完成した図を見比べると、「その人が何を考えたのか」がにじみ出てきます。図は、プレゼンツールである前に、自分の考えを磨き上げて投影する思考ツールなのです。