「予材管理」とは何か?

 これを具現化したマネジメント手法を「予材(よざい)管理」と名づけています。

 これから紹介する「予材管理」の発想は、最低でも目標予算を達成させる新しいマネジメント手法です。「目標達成を目指す」のではなく、「どんなに悪くとも目標達成」です。

 おそらく多くの企業で実施されている営業マネジメント手法と、根本的に発想が異なると思います。最初に覚えていただきたいことは、この管理手法を取り入れることによってキツイと思う営業マンが増えたり、労働時間が長くなったりすることはありません。発想の転換をするだけです。

  これは、資格試験の合格を目指す発想と似ています。

 資格試験は、どんなにがんばっても合格基準を超えないと資格を取得することはできません。

 しかし、当日までどのような試験問題が出るかわからないですから、どんな問題が出ようとも対処できるように日々勉強をするわけです。限られた時間の中で正しい解答が書けるように、訓練を繰り返します。不合格というリスクを避けるためです。

 「予材管理」も同じです。

 「最低でも目標はクリアする」という発想ですから、「目標未達成」というリスクをヘッジするために、1年かけてあらゆる対策を取っていくのです。

 アテにしていた案件がライバル会社に取られても、お客様の都合で仕事が来期にずれ込んでも、取引先の経営が悪化して注文が激減したとしても、それでも目標を達成させるための「材料」をあらかじめて仕込んでおくのです。

「見込み」「仕掛り」「白地」の3つのファクター

 「予材管理」の「予材」とは、予定している材料のことを指します。

 「予材」は、「見込み」「仕掛り」「白地(しらじ)」という3種類のファクターで構成されています。

 目標数字があって「このままなら80%くらいで落ち着きそうだな」という状況があったとき、この80%の部分を「見込み」と呼びます。そしてこのとき、目標数字と「見込み」とのギャップである20%が空白です。するとここで、「脳の空白の原則」が働きます。

 「脳の空白の原則」とは、脳に空白があると埋めたいという心理欲求が働くことです。ですから、目標達成に焦点が当たっているなら、必ず脳に空白ができます。

 空白は過去の体験で埋めます。

 これまでのやり方で埋まるのであれば、その体験に沿って仮説を立て、「予材」を仕込んでいきます。しかし過去のやり方で予材がつくれないのであれば、当然のことながら現場に出かけなければなりません。

 「理解=言葉×体験」です。会議で話し合っても、インターネットを眺めていても、お客様の真意と出合うことはありません。実際に体験を積むことで、「予材」という仮説ができあがっていきます。

 実際に見積りや提案書を出した先、提案活動を繰り返しているため、ひょっとしたら注文が来るかもしれない。

  このような、現在仕掛かっているものを、「予材管理」の中で「仕掛り」と呼びます。

 言葉や定義が若干異なっていても、おそらくみなさんの会社でも「見込み」と「仕掛り」の「予材」をエクセルシートなどで一覧表にし、情報共有していることと思います。その資料をもとに会議などで「どうやって目標が達成するのか」とディスカッションしていることでしょう。

 ここで大切なのは、「見込み」と「仕掛り」を足し合わせて目標予算の100%をはるかに超えていることです。

  当たり前ですが、成約率は100%ではありません。その中で空白を埋めていくためには、「見込み」と「仕掛り」を合わせて100%をはるかに超えていなければならないということです。

 ところが、です。

 ほとんどの企業でそうなっていません。
 「営業活動の見える化」と言いながら、全部見せていないのです。

 「見える化」「可視化」という表現はよく目にします。「営業活動を見える化して、プロセス管理する」のは確かにとても重要です。
  しかし営業本人が、見せたいものだけ「見える化」していたのでは、意味がありません。オープンにしたい案件だけ管理シートに記入して提出していると、マネジャーにこう指摘されるでしょう。

 「これで本当に目標を達成するのか?」
 「いやーわかりません」

 当然です。営業活動を「見える化」しているように見えても、目標達成が見えないからです。