こんな日本人がいたのか!?『マレーシア大富豪の教え』(ダイヤモンド社)で話題となった小西史彦さんが、特別インタビューに応じてくれた。24歳のときに「無一文」「コネなし」でマレーシアに飛び込み、艱難辛苦の末に、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げ、マレーシア国王から民間人として最高位の「タンスリ」という称号を授けられたVIP中のVIP。今回のテーマは「人の育て方」。部下をどのように育て、引き出し、業績を伸ばしてきたのか。「上司」の本質を聞いた。(聞き手:ダイヤモンド社 田中泰、構成:前田浩弥)
相手の長所を刺激しながら、成長を待つ
――小西さんにとって「人を育てる」とはどういうことでしょうか?「人を育てよう」という思いが強すぎるあまり、かえって「上から目線」になってしまい、部下のやる気を削いでしまうおそれもあると思いますが。
小西史彦(以下、小西) 「人を育てる」とは決して、「上にいる人間が、下にいる人間を引き上げる」というものではありません。前回にお話ししたように、私にとってすべての人間関係の基本は"I trust you, before you trust me."、つまり「自分のほうから相手の立場を理解し、相手の権益を尊重して、相手を助ける」ということです。部下に対しても、自分のほうから相手の立場を理解し、相手の権益を尊重して、相手を助けようとすれば、目線は自然と「同じ高さ」になっているはずです。部下に媚びるわけでも迎合するわけでもなく、本当に自然と「同じ高さ」になっている。
――なるほど。
小西 そして、目線の高さを合わせたうえで、「相手の長所を刺激して、待つ」。これが私の「人の育て方」でしょうかね。
――「相手の長所を刺激して、待つ」ですか。
小西 はい。私も含めて人間はみんな、長所と短所を持っています。誰かを育てようとするとき、私は、その人の短所には目をつむり、長所を伸ばすことを意識します。
たとえば、人間が仕事で発揮するポテンシャルのすべてを100としましょう。Aさんという人間は仕事で「長所50:短所50」のポテンシャルを発揮します。長所を発揮してうまくいく仕事が半分、短所が出てうまく進まない仕事が半分ということですね。
このとき、短所が出てうまく進まない仕事を減らそうと思ったら、まずは「長所を伸ばす」ことに目を向けるべきです。短所の50を35に減らしたところで長所が伸びるとは限りませんが、長所の50を60、65、70と伸ばしていけば、短所の割合はいつの間にか40、35、30と減っていくものなんです。
私自身そうですが、短所に対してネガティブな指摘ばかりされたら、誰だって素直にはなれませんよね?それよりも、長所を伸ばして自信をつけてもらう。そうすれば、自ら短所をただそうという気持ちになってくるんじゃないでしょうか。
――たしかに、そうですね。
小西 ただし、長所を伸ばすには時間がかかります。上司には辛抱強さが必要。その間、ひたすら「刺激しながら、待つ」のです。