「機能する計画」をつくるシンプルな鉄則

 だから、私はブリヂストン・ヨーロッパの中期経営計画を概略次のような仕組みにしました。
 出発点は、CEOである私がグループ全体の「あるべき姿」を示すことにあります。このときには、「3年間で黒字体質と成長体質をあわせもつグループを確立する」という「あるべき姿」を描き、それを各子会社のCEOに伝達しました。そのうえで、各子会社の置かれている現状を踏まえながら、それぞれが主体的に自社の「あるべき姿」を描き、それをもとに中期経営計画を策定。それを全部集めたうえで、ヨーロッパ本社で全体の整合性をチェック。必要であれば、オーナーシップをもつ各子会社のCEOとしっかりとコミュニケーションを取って、合意を得ながら整合性をとっていくわけです。

 こうして、子会社ごとに各年度の投資計画・人員計画など具体的な施策を全て入れ、時系列で並べた中期経営計画を策定したうえで、最終的にはグループ全体で整合性のとれた連結計画に確定して、グループの幹部全員で共有。これを、毎年1年ずつ延長してローリングしていくことによって、「あるべき姿」に一歩一歩近づき達成するという仕組みです。この中期経営計画を勝手に変更することは、本社、各子会社ともに禁止。必要であれば、必ず協議し、お互いに納得したうえで変更を加えます。いわば、従来ありがちだった2つのタイプの中期経営計画のハイブリッド型とも言えるかもしれませんが、私は、本来あるべき当たり前の計画のつくり方をしているだけという認識でいます。

 なぜなら、ここでやろうとしているのは、要するにリーダーが魅力的な「あるべき姿」を描き、それに共感するメンバーが、オーナーシップをもってそれぞれの仕事を進める、というリーダーシップの基本を大がかりな「仕組み」にしただけのことでもあるからです。本質的には、入社2年目のときにやったことと変わらないのです。