「優れたリーダーはみな小心者である」。この言葉を目にして、「そんなわけがないだろう」と思う人も多いだろう。しかし、この言葉を、世界No.1シェアを誇る、日本を代表するグローバル企業である(株)ブリヂストンのCEOとして、14万人を率いた人物が口にしたとすればどうだろう? ブリヂストン元CEOとして大きな実績を残した荒川詔四氏が執筆した『優れたリーダーはみな小心者である。』(ダイヤモンド社)が好評だ。本連載では、本書から抜粋しながら、世界を舞台に活躍した荒川氏の超実践的「リーダー論」を紹介する。
リーダーシップに、「年齢」も「職位」も関係ない
「理想」と「現実」――。
私たちは、常にこの狭間で生きることを余儀なくされています。
理想を持たない者は、現実的対応に追い回されるだけであり、現実を見据えない理想主義者が口にするのは“寝言”のみ。重要なのは、理想と現実のバランスをとることです。ただし、私は、優れたリーダーになるためには、常に理想から出発する必要があると考えています。なぜなら、人間という存在は、理想を求めることに根源的な喜びを感じるようにできているからです。
楽しい仕事とは何か?
それは、魅力的な理想を実現する仕事にほかなりません。ただ、現実的対応に終始するような仕事が楽しいとは、誰も思わないのではないでしょうか?そして、楽しい仕事をするからこそ、周りの人もその楽しい仕事に加わりたいと思う。楽しい仕事によってこそ、リーダーシップの根っこは育つのです(連載第5回参照)。
そして、その理想が真に魅力的であるからこそ、周囲の人も共感してくれる。その理想に向かって努力する人物の姿を見て、周囲の人が「力を貸そう」「協力しよう」と思ったときに、はじめてリーダーシップが生まれるのです。つまり、理想こそが、リーダーシップの根源にあるということです。
これは、年齢や職位などにはまったく関係のないことです。
皆さんも、こんな経験があると思います。たとえば、野球チームに入っている子どもが、チームを強くして大会で勝ちたいと思って、チームメートを集めて毎日練習していれば、応援しようと思うはずです。練習中に飲み物を差し入れたり、試合となれば応援にかけつけたり……。あれは、「大会で勝ちたい」という理想を一生懸命に追求している子どもたちの姿に、大人が共感したからこそ生まれる行動。リーダーシップを発揮しているのは子どもたちなのです。