30年前、新入社員の研修で、筆者は初めて中国に行った。ダイエーがグループ全体の研修で客船をチャーターして期間は10日間ほど、帰りは神戸港に着いた。時はバブル直前、中国から帰ったばかりの目には日本がものすごく輝いて見えて、自分はこんな素晴らしい国に住んでいたのか、とびっくりした。
が、今は逆に中国が輝いて見える。
一つの国が永遠に輝き続けることはない。光は中国に移ったのである。
フロアにいる客は20代から30代が主である。
アナスイのバックにグッチのマフラーを巻いた美人の女子が男性にかしずかれ、お買いもの中である。こういう、「おまえ、金持ちやろ」みたいな若者たちはホテルに泊まって、サクッとショップを見にきて、短時間で帰っていく。
ちょっと話しかけてみて、「ホテルはまた来る?」と聞いたら、「いや、世界中泊まりたいところはたくさんあるし」。ああ、そうですか。
もちろん、いろんな層がいるが、中国の無印の客は、日本の、ワンルームを安く趣味のいい雑貨でシンプルに仕立てるような若者だけではない。いわゆる富二代(企業家や汚職官僚など金持ちの子弟)など、信じられない金持ちもけっこういる。
実はこのホテルは、タクシーが入りにくいところで、帰りもちょっと苦労したのだが、若い中国人カップルが運転手さん付きのチャーターの高級車を、簡素な建物の無印ホテルに横づけしていた。
一方、無印にあこがれ、みんなで旗艦店を見に来ましたぁーみたいな若者たちは、店のソファで長居して、無料カフェにしている。こちらもキャッキャと写真を撮り、楽しそう。