悪い民主主義がはびこる大企業
オーナー企業や会社分割が日本を救う!?

ちきりん 日本の大企業って、社長なのに重要なことが自分ではほとんど決められないケースもあるように思えます。創業社長が率いている会社や同族企業の方が強いリーダーシップが発揮できるケースが多いのでしょうか?

藤野 同族経営の方がうまく機能しやすいと思いますね、一般的には。反対に、サラリーマン経営者の大企業、特に半官半民の会社はだいたいダメですね

ちきりん そういう官僚組織化した大企業はどうしたら変われるのでしょうか。私がこれはいいお手本だと思っているのは、昔の電電公社です。あそこが民営化されてNTTとなり、東西のNTTやドコモなどに解体されたことのメリットって、ものすごく大きいじゃないですか。もしあのままNTTが解体されずにいたら、日本の通信業界は今でも何も変わってなかったのではないかと思うほどです。

 民営化してドコモやNTTデータなどを切り離したことによって、それぞれの会社が競争マインドを得、新たな成長機会をつかんでいきましたよね。このように会社を分割して、若干、規制緩和をして新規参入を促しただけでも、急速にサービスが多様になり、料金も下がります。こうした手法を電力業界はもちろん他の業界にももっと積極的に使えないのかなと思うのですが。

藤野 私も組織を変えるというのは、いい考えだと思いますね。あと、投資する側から言わせてもらえば、元社長や元会長にいくらお金を払っているのか開示して欲しい。誰が、どんな名目で、どのくらい貰っているのか、そしてそういうOB連中が実態的に経営にどういう権限をもって何をしているということを明らかにしていかないと、大企業では本当の意味でのガバナンス(企業統治)が効かないと思うんです。

 日本によくあるのは、日本の大企業は会長や顧問の人たちが会社いて、お金をたくさんもらい続けて、発言権も強くて……というパターンです。だから、社長といってもナンバー6のような変な状況がよくあります(笑)。

ちきりん それじゃあアナリストとして社長訪問をしても意味がないですよね(笑)。

藤野 そうそう(笑)。

会社の体質はネットで
アニュアルレポートをみればわかる

藤野 僕は「日経アニュアルリポートアウォード」の審査員を去年から引き受けたので、上場企業のアニュアルレポートを集中的にたくさん読むんです。アニュアルレポートというのは投資家に向けて発行する、その企業の事業戦略、経営戦略、財務諸表などが記載された年次報告書です。

 その経験からすごく思ったのは、アニュアルレポート見るだけで相当その会社のカルチャーがわかるなと。たとえば、商社ってアニュアルレポートがすごく面白いんです。三菱商事だと社長の動画があったり、ほかの商社も読み物として面白くてワクワクするんです。それに対して、読んでいて全然面白くないのが総合電機のアニュアルレポートです。

ちきりん そうなんですか!? アニュアルレポートもたくさん読むと違いがわかるんですね。

藤野 特にソニーは悲しいほど暗い感じのレポートです。まずCEO(最高経営責任者)の写真があり、そのあと役員の話が載っていて、さらに部門別に責任者の話か載っている。さらに製品が紹介されていて、工場が紹介されているんですけど、そこに人がいないんですね。

 創業者の井深大さんが「自由闊達にして愉快なる理想工場」といっていたころの熱とか楽しさとかが全く感じられません。それというのも、それを作っている人の息吹や、それを使ってどんな生活になるのかというワクワク感が全然伝わってこないのです。

 また世界的なトレンドとしてアニュアルレポートは、Web上で閲覧できるオンラインアニュアルレポートになってきています。動画や音楽などオンラインの特性を活かしてわかりやすくて楽しいものを提供する企業が増えています。そんななかソニーやパナソニックはたんにPDFを張り付けているだけなんです。

ちきりん ソニーやパナソニックなんて、そこは専門分野のひとつなんじゃないんでしたっけ? なんで他業種が動画を使い始めているのに、ソニーやパナソニックがPDFなんでしょう。がっかりですね。

藤野 そうなんです。自分の会社のことだったら、もっと動画できれいに表現してほしいのに、昔ながらのアニュアルレポートのまま。これでは、僕らはソニーの何に夢を持てというのか、と思います。今、日本の総合電機は皆そんな感じなんですよね。

ちきりん それはそれで興味深いですね。最近全然みていないので、一度、アニュアルレポートを読み比べてみます。

藤野 日本企業がリバイバルするためには、自身が「ワクワク」したり、「夢を語れる」企業に変わることが必要だと痛切に思います。それが、成長へのカギじゃないでしょうか。

                                                                                第4回へ続く


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