ジェフ・ベゾスは100万人が宇宙に住む経済圏にするためのネックはアクセスにあると考え、高い輸送コストを下げるためにスペースアクセス、輸送手段の開発から着手しました。
宇宙会社のブルーオリジン設立時に500億円にものぼる資金投入を行っていることにも、挑戦する意思の大きさを知ることができます。
まず着手したのは、エンジン開発でした。「BE-3」「BE-4」など、後に高い評価を得ることになるエンジンです。そして、BE-3を搭載したサブオービタル機、さらにはBE-4を搭載した大型ロケットと、開発を推し進めていくことになります。
2010年からNASAの商業有人機開発プログラムという国の商業化政策が始まったとき、手を挙げた企業の中に、ジェフ・ベゾスが率いるブルーオリジンがありました。ブルーオリジンがサブオービタル機だけではなく、大型ロケットをつくっており、しかもオジナルエンジンを開発していたことが、ここで初めてわかったのです。
2015年には、ロッキードやボーイングのロケットを打ち上げているULAの次期基幹ロケット「バルカン」のエンジンにBE-4を提供することを発表、フロリダにエンジン製造工場を建設して、1000人規模の雇用を発表しました。
アマゾンが本気で投入する年間1000億円の行方
アマゾン・ドット・コムの宇宙会社であるブルーオリジンは、ジェフ・ベゾスが個人の持ち株を売却した500億円を投入して設立されました。
そして2017年4月、ジェフ・ベゾスは記者会見でブルーオリジンに毎年1000億円の資金を投入すると発表しました。
日本の宇宙関連予算は約3000億円。日本の宇宙関連予算の3分の1のスケールです。彼が見ている宇宙ビジネスのポテンシャルがいかに高いかがわかります。
ブルーオリジンが開発しているのは、垂直離着陸型のサブオービタル機「ニュー・シェパード」で、宇宙旅行や宇宙実験をすることができます。
これは地面から垂直に打ち上げられ、垂直に上昇して一般的に宇宙とされる高度100キロ超えまで到達します。上空で先端に搭載されている有人カプセルを切り離すと、カプセルは弾道飛行をして、その間、約4分間の無重力状態が体験できます。
カプセルはパラシュートを開いて減速して帰還します。一方、ロケットの部分はそのまま垂直に降下し、着陸寸前にエンジンに再着火、減速しながら陸地に着陸して回収されます。そして、機体の整備や燃料の補給を行った後、再び打ち上げることができます。
2015年11月、ニュー・シェパードは、高度100.5キロまで到達した後、地上への着陸に成功しました。その後、同じ機体で2016年に4回、100キロを超える試験飛行に成功した後、試験機は退役。2017年12月から改良型ニュー・シェパードでダミーとなるマネキン乗客であるスカイウォーカーを搭乗させて帰還に成功します。有人機としての試験飛行、商業飛行認可を得て、2018年にいよいよ商業運航が始まる計画です。
試験飛行とはいえ、宇宙に到達するサブオービタル機の再使用を繰り返しているのは世界初のことです。ブルーオリジンでは、今後もさらに無人実験飛行を繰り返す予定で、有人飛行開始に向けた開発は最終段階です。