人類の進化の歴史は「3つの技術進化」の歴史

 既に述べたように、人類の経済発展は、その時々の既得権益層を滅ぼす一方、多くのビジネスチャンスを生むというディスラプターの存在なしには語れない。そして、このようなディスラプター誕生の陰には、常に技術進化が存在している。

 人類の進化の歴史は、次の三つの技術進化の歴史と言っても過言ではない。

(1)「インフォメーション」
(2)「モビリティ」
(3)「エネルギー」

(1)は、情報認知伝達に関する技術の進化である。これを『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』では「インフォメーション」技術の進化と呼ぶ。ここでの「インフォメーション」=情報には、単純な視聴覚などであらゆる生物が認知伝達するような情報に加え、人間ならではの概念情報も含まれる。

(2)は、ヒトやモノの物理的移動に関する技術の進化である。これを本書では「モビリティ」技術の進化と呼ぶ。これは、移動する能力のスピード、距離、あるいはそのための省力化技術の進化が主に対象となる。

(3)は、先の二つの技術進化を可能とさせる動力源に関する技術の進化である。これを本書では「エネルギー」技術の進化と呼ぶ。

 身近な過去を見ても、映画からテレビへの変化((1)「インフォメーション」技術の進化)は各家庭に映像娯楽をもたらすとともに、大量生産大量消費の消費生活を加速させた。

 工場の機械化は工業生産額を飛躍的に拡大させ、全国津々浦々に張り巡らされた鉄道網や、個々人が自由に移動することを可能とする自動車と道路網により、個々の家庭へ配送することを可能とした((2)「モビリティ」技術の進化)。

 そしてこれら二つの技術進化は、それらを可能とするエネルギー、すなわち電気や石油燃料の存在が可能とさせた((3)「エネルギー」技術の進化)。

 人類の経済発展、あるいは人類の進化そのものはディスラプションの連続であるが、それは人間そのものが現状を壊し、新しい未来に向けて、自らがより暮らしやすくなろうとする本能そのものとも言える。

 つまり、人間の存在そのものがディスラプターであり、それに抗うことは自らを否定することなのである。このような未来に向けての動きは既に不可逆であることを認め、むしろ、その不可逆の流れの中で、企業や個人が生き抜くために何ができるかを考えることが重要である。

 それには、有史以来、「インフォメーション」「モビリティ」「エネルギー」技術の進化において、どのようなことが起こってきたのかを概観した上で、ディスラプター側とディスラプターによって滅ぼされた側、すなわちディスラプションの勝者と敗者を分けたものが何かを見ることは意義があるであろう。

 そして、この「何か」は現代のディスラプションの勝者たちにも共通するのであれば、それは現代にも有効ということがわかる。