3日間で行ける月と、片道半年かかる火星
月は地球に最も近い天体。実際、地球からは3日間で到着できる距離です。片道に半年かかってしまい、行くこと自体が大きなチャレンジである火星とは、まずここが大きな差です。
だから今では、月は「探査の場所」であるとともに「開発利用の場所」として見られています。火星は有人でまだ到達していませんから、初めての取り組みをしようという動きが活発です。
2015年11月には、「商業宇宙打ち上げ競争力法案」がアメリカ議会を通過しました。商業宇宙利用を振興するための法律です。ここでは、月やその他の天体の宇宙資源を利用した事業を可能にする項目が含まれており、これによって月や火星などで宇宙資源の採集や所有が可能になりました。
特に月については、現地の資源を利用して、インフラや燃料などの経済活動を行って、多くの成果をあげることが期待されています。月は今、地球にとって「第8の大陸」とも言われています。
商業としての有人宇宙開発は、2005年に宇宙旅行代理店のスペース・アドベンチャーズが月旅行の販売を開始したことから始まりました。この月旅行は、9日間ほどかけて月をぐるりと一周して地球に戻ってくるという行程です。料金は110億円です。最少催行人数が2名で、1名はもう決まっているとのことですが、あと1名の契約が成立したところで、月旅行のための宇宙船の製造を始めるのだそうです。
Xプライズ財団が2013年に実施した市場調査では、10年後に月の市場規模は1900億円、25年後には6400億円になり、約70%が商業顧客と予測されていますが、これは5年前のもの。今はもっと大きな数字になっている可能性があります。月面輸送サービスを開発しているアストロボティクスの調査でも、2020年時点の月の市場は、1500億~3100億円という試算があります。
さらに、大手ロケット打ち上げ企業のULAが2016年に発表した「シスルナ1000」では、15年後の2030年には500人が宇宙に住み、スペースエコノミーは現在の33兆円から100兆円になるとしています。
いずれにしても、民間の月事業で、まったく新しい巨大な市場がつくられるのです。