「月資源」を巡る新たなゴールドラッシュ

 例えば、アメリカのベンチャー企業、ムーンエクスプレスは、世界で初めて民間企業が月面で事業をするための承認を政府から得ています。グーグル・ルナ・Xプライズにも参戦している企業で、月に物資を運ぶ月面輸送サービスの事業化を目指しています。

 2010年に設立されたムーンエクスプレスは、まずは月面着陸機を打ち上げ、その後、低コストのロボット宇宙機による月への輸送ビジネスを手がけるとし、将来的には月の資源利用事業へと発展させていく事業プランを持っています。

 月面での事業について承認を政府に求める申請には、他にも数社が提出していますが、ムーンエクスプレスの承認が初めて。これは今後、期待される月資源のゴールドラッシュに向けた大きな一歩になるとみられています。

 また、アメリカのシャクルトン・エナジーは、月の極地に豊富にあるとされている水をターゲットにしています。

 水を得て何をするのかといえば、燃料です。水を水素と酸素に分解し、液体化すれば、ロケットを動かす燃料として使うことができます。

 シャクルトン・エナジーは、地球の低軌道上にガソリンスタンドのような宇宙燃料ステーションを建設しようとしています。彼らの最終的な目標は、「地球、月そして火星に、水、燃料と太陽光を供給し、宇宙フロンティアを促進させること」です。

 2020年代に、低軌道と月面での燃料供給を開始することを目指しています。

 商業宇宙ステーションを開発しているビゲロー・エアロスペースは、NASAジョンソン宇宙センターの協力のもと、「月面軌道ステーション」や「月面基地計画」も進めています。

 人類が月面に立った1969年から半世紀近く。民間企業の参入により、月の開発は大変なスピードで進んでいるのです。

(この原稿は書籍『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)