とくに携帯の2大キャリアのルーツは半官半民で、“天下りの役人”がたくさんいる組織だし…。

 インタビューは中国語でやった。思えば彼が今まで活躍してきたインドネシアもシンガポールも実は華僑・華人文化圏である。英語はもちろんのこと、中国語もたいてい通じる。

 彼にはもちろん優秀な通訳はついているが、初めて直接の意思疎通も、文化の違いも難しい日本で苦労しているだろうな、という気はした。

 ちなみに当日、同じ席上に立ったもう2人の中国人経営者は留学経験があったりで日本語が堪能。私から見ると、かなり“日本人化した中国人”である。

日本ではお金を積んでも
人材が来ない

 日本ではお金を積んでも、人材が来ない。

 中国企業の先が読めないのもあるが、日本ではビジネスの資産が個人でなく、企業に集約される。

 日本の大手メーカーのキャリアの担当者が、オッポに行って成果を出せるとは限らない。

 またメーカーが、いいスマホを低価格で安定的に提供したとしても、キャリアに参入できるとは限らない。

 参入基準は明らかにされない。

 返答は遅い。

 鄧宇辰氏は優秀な経営者だが、“個人”は誰がやっても一緒というファンタジーを前提として動いているのが日本社会である。

 個性を認めないのなら、違いを決めるのは会社でも個人でも、その場にいる時間の“長さ”。新参者はそれだけで不利になる。

 実力や商品力より“会社”の名前が重要な、それも新しいものに対しては「はあ、オッポさんですか」というような、官庁に名刺を置くだけに何年も通わせるような、意味のない努力が大事な世界。