世界中で広がりを見せている#MeToo運動。しかし、日本では「告発」「抗議運動」のイメージが強い。そんな中、マネジメント誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』が、「#MeToo」論文を発表。米国はもちろん、日本でも大きな話題となっている。一連の#MeToo運動がアカデミックに論じられたことは、「告発」「抗議運動」から、「セクハラ文化の撲滅」に向けて一歩動き出した証拠だとも考えられる。今回、ニューヨーク在住のジャーナリスト津山恵子氏に米国での動きを語ってもらった。
「セクハラは、どの企業でもあってはならない」
テレビ局最大手CBSがとった対応とは?
女性が、女性であることに葛藤を感じずに、社会で個性と能力を存分に発揮できる――。そんな時代が、米国では、確実に急速に訪れようとしている。実際、ニューヨークに住んでいる私自身も、そんな胎動を強く感じる。
「恋におちたシェイクスピア」「ロード・オブ・ザ・リング」などのヒット作を手がけたハーヴェイ・ワインスタインは、姿を消した。3月4日に開かれた映画のアカデミー賞授賞式は、あっさりと彼を亡き者として扱った。むしろ、#MeTooや#TimesUpの色が前面に打ち出され、女性やマイノリティの讃歌にあふれていた。サリー・ホーキンズが主演した「シェイプ・オブ・ウォーター」は、女優主演作として13年ぶりに作品賞を得た。
CBSの看板アンカー、チャーリー・ローズも消え去った。オバマ前大統領など各国首脳をインタビューしてきた彼の功績の影に、身も凍るセクハラに耐えてきた女性スタッフが、数十人もいた。さらに、自分の職を失わないために、セクハラを見てみないふりをしてきた男性スタッフも相当の数に及ぶ。彼を即日解雇したテレビ局最大手CBSは、「(セクハラ)は、どの企業でもあってはならない」と発表し、報道機関がセクハラに目をつぶらないことをはっきりと表明した。
続いて、メトロポリタン歌劇場の名誉指揮者ジェイムズ・レヴァイン、上院議員アル・フランケンなど、地位もキャリアもある男が、続々と各界から追放された。
ジェイムズ・レヴァインは40年前、未成年の男性に対する性的虐待が浮上した。上院議員候補ロイ・ムーアも、40年前のセクハラを女性に告発された。「40年も前のことだからもういいではないか」という声もある。しかし、どんなに前であっても、女性や未成年の人権を蹂躙し、そしてその苦々しさや苦悩とともに数十年生きることを強いた罪は大きい。