今、企業がすべきことは、
セクハラ加害者・被害者、両者への迅速な対応

「2017年10月をもって、セクハラ訴訟の世界は、180度変わりました」

 こう話すのは、ニューヨーク市のセクハラ訴訟専門弁護士、クリストファー・ブレナンだ。過去10年間、セクハラ案件を数百件、手がけてきた。

「過去は、セクハラを告発する女性に対する偏見もあり、事を丸く収めようとするか相手にしないか、『加害者はそんな人物ではない』と反発するケースさえありました。でも、(2017年)10月以来、被害者が言っていることは事実なのだと、企業がすぐに反応するようになりました。企業のゴールはいまや、セクハラの被害者を守ることであり、加害者に対して素早い対応を取ることで、被害者は社会的にずっと大切にされるようになりました」

「10月」というのは、ニューヨーク・タイムズとニューヨーカーが、ワインスタインが過去30年にわたり、セクハラ行為とレイプを含む性的暴行を繰り返していたことをスクープした月だ。

 ワインスタインのセクハラを暴いたニューヨーク・タイムズとニューヨーカーの記事には、メディア界で最大の名誉であるピュリッツアー賞が贈られた。報道が、公共の正義、つまり、女性あるいは弱者の権利を守る役割を果たしたことを示した瞬間だった。

単なる社会運動ではない
アカデミックな視点で語られる#MeToo運動

『ハーバード・ビジネス・レビュー』が論文「#MeToo運動を機にセクハラ文化は終わるのか」を掲載し、セクハラ文化終焉への動きを伝えたのも画期的だ。

 同誌によると、共和党のトップである上院院内総務ミッチ・マコネルは、ロイ・ムーアを女性らが告発した際、「彼女たちの言うことは、信じられる」と発言した。ムーアは、南部アラバマ州で上院議員補欠選挙を戦っていた最中で、マコネルは共和党候補の当選を危うくするのを承知での「歴史的」な発言だった。

 同誌が指摘した見過ごしてはならない点は、男性の被害者もいるという事実だ。米雇用機会均等委員会に2016年告発されたセクハラの17%が男性によるもので、多くが男性から被害を受けているという。分かりやすく言うと、「男らしさが足りない、もっとしっかりしろ」という“いじめ”だ。テレビ局の大道具を担当するゲイの友人が、雇われた初日に軍手をはめたら、同僚に笑い者にされた。こうした例だ。