社員を追い込んでしまった痛恨のミス

 以前、ジョブ・ローテーションを3年間、かけなかったことがあります。

 その結果、会社の売上は上がったのですが、このとき、私は痛恨のミスを犯しました。

「売上も上がっているし、社員も楽しみながら仕事をしている」と勘違いしてしまった。

「数字を追いかけない」と言っておきながら、「来期の目標はこれくらいだから」と数字を口にし、社員を追い込んでいたのです。

 実際には、残業時間が大幅に増えていて、売上が上がるほど、社員は疲弊していきました。
 その事実に驚いた私は、すぐに、次のような指示を出しました。

「アメリカからの受注も、国内の受注も制限して、目標設定を下方修正しよう。売上が落ちてもいいから、残業時間を減らすことを最優先に考えよう。
 また、社員の負担を減らし、ルーティン作業に時間を割かなくてもいいように、人員を増強する。ジョブ・ローテーションも行う」

 そして、中途採用、第二新卒、パート・アルバイトを「2ヵ月で20人」採用して仕事を分担した結果、残業時間は一気に減りました。

 ジョブ・ローテーションを常態化する意図は、現状を否定させるためです。

 同じ仕事をこなすようになると、現状に慣れが生じ、課題が見えなくなります。
 イマジネーションは、現状肯定の中からは決して生まれません。

 今回、年間2000人の見学者が訪れる、鉄工所なのに鉄工所らしくない「HILLTOP」の本社屋や工場、社内の雰囲気を初めて公開しました。ピンクの本社屋、オレンジのエレベータ、カフェテリア風の社員食堂など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事をご覧いただければと思います。