差の大きい順に「仕事の割り当てが男女平等」(7.6ポイント)、「残業を見直す雰囲気」(6.6ポイント)と続いています。仕事の割り当てにおいて男女差別がなく、しかも、長時間労働が放置されていない職場では、昇進意欲の高い女性が育ちやすいということが言えそうです。裏を返せば、男性ばかりにチャンスが与えられていたり、「残業して当たり前」という雰囲気があったりする職場では、女性はなかなか「昇進したい」という気持ちは持てないとも考えられます。
なお、仕事の割り当てと慢性的な長時間労働の慣習が、女性の昇進意欲に影響を及ぼす可能性があるという仮説をさらに補強するものとして、興味深いデータを2つご紹介しましょう。
まず、次のデータは女性の昇進意欲と、基幹的職務の経験の多さとの関係を示したものです。基幹的職務とは、「対外的な折衝をする職務」「会社の事業を立案する職務」「スタッフを管理する職務」「プロジェクトのリーダー的職務」など、企業の中核的な仕事のことを指します。
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ご覧のとおり、課長相当職以上への昇進を希望する人の割合を比較すると、企業の中核を担うような仕事を多く経験している女性では36.6%(20.8%+15.8%)だったのに対し、そうした経験がない女性では20.3%(14.0%+6.3%)に留まっています。基幹的職務を経験した女性ほど、昇進意欲を持ちやすいことが見て取れます。
これと似た知見としては、女性新入社員を対象にした島(2017)の研究があります。それによれば、「発表・報告のためのプレゼンテーション能力」「社内外で円滑に仕事を進めるコミュニケーション能力」「企画・アイデアなどの創造力」「チームやグループを牽引するリーダーシップ」「論理的な思考力」などを自分は備えていると考える女性ほど、管理職を目指そうとする傾向があるそうです。つまり、「オペレーション的な単純な仕事の能力」ではなく、「自分には中核的な実務能力がある」という認知こそが、昇進意欲に影響するのです。
さらに面白いのが、女性がこうした基幹的職務に割り当てられている割合を、同一企業に勤める男性の残業頻度別で見た次のデータです。