今夏よりオーストラリア1部リーグ、メルボルン・ビクトリーに移籍したサッカー・本田圭佑選手の専属分析官(アナリスト)として、先月まで本田氏と行動をともにし、彼個人の、”戦術参謀”的な役割を担っていた男がいた。白石尚久(たかひさ)氏(42歳)である。
現在は、本田氏とは別の道を進み、オランダの1部リーグ・SBVエクセルシオールで、アシスタントコーチ/テクノロジーストラテジストとして、新たなキャリアをスタートさせた。
チームのなかで、アジア人は白石氏しかいない。
世界で活躍するサッカー指導者である白石氏だが、
そのキャリアのスタートは18歳と、驚くほど遅い。
部活動未経験で、大学の体育会サッカー部にさえ入れなかった彼は、
18歳で単身アルゼンチンに渡り、育成選手からコツコツとキャリアを積み上げていく。
そして、36歳の時にアジア人で初めて欧州1部リーグの監督(スペイン女子)に就任。
41歳でACミラン、パチューカ所属の本田圭佑選手(日本代表)の専属分析官になった。
このような異色のキャリアを持つ白石氏が、スペインの名門FCバルセロナ(バルサ)のスクールコーチ時代に学んだ、コミュニケーションの「基本」とは?
本記事では、初の著書である『何かをやるのに遅いということは決してない。』から、内容の一部を再編集し特別公開する。(まとめ/編集部)
コミュニケーションでいちばん大切なのは
相手と同じ目線に立つこと
コミュニケーションを図るときにいちばん大事なのは、相手と同じ目線に立つことだ。
それを思い知ったのは、2008年から約1年間務めた
スペインの名門FCバルセロナのスクールコーチ時代だった。
バルサのスクールには、子どもたちに何かを教えるときや何かを聞き出すときには
「必ずヒザをついて話せ」というルールがあった。
上から見下ろすように話すのではなく、ヒザをついて、しゃがんで、
子どもの目線の高さに合わせて話せと。
つまり、「大人と子ども」ではなく「指導者と選手」という関係で接する。
その姿勢が子どもの考え方や感じ方を尊重し、理解することにもつながるのだと。
だから、常にこのことを心がけて子どもたちと接した。
上から目線で「教えてやる」のではなく、
子どもたちの感情に寄り添って理解して、
ときにしかり、ときにほめ、楽しませ、悔しがらせ、
もっと好きにならせて、そこから自分で学ばせた。
ところが、その3年後にスペイン女子1部の
CEサン・ガブリエルを率いることになった当初、
女子選手をマネジメントすることの難しさに直面して、
この基本を見失っていた時期がある。