「魚」ではなく、「魚の釣り方」を売る

AIが企業のインフラになる時代をつくる

ムーギー:お話を聞いていると、御社のビジネスは、実はコンサルティングセールスチームが重要ですよね。

岡田:お客さまの方で、AIが出来ることと出来ないことの整理やROIの整理が出来ていくと、我々のコンサルティングはいらなくなります。ただ、現状は、コンサルティングを含めた提案も重要な役割を果たしていますね。
 我々はよく、魚に例えるのですが。

ムーギー:魚?

岡田:はい、我々のビジネスは魚を売っているのか、魚の釣り方を教えているのかどちらなのかと。AIが注目される技術となり、AIを使ったサービスを提供する企業も出てきています。そして、多くの会社はAIという魚を売っているんです。「このAIはすごいです」みたいな感じです。我々は魚の釣り方を教えています。「こういうふうに運用していくと、AIって活用できるんですよ」と。そこもビジネスモデルの大きなポイントだと思っています。

小売・流通業以外に、ブルー・オーシャンは広がるか

ムーギー:来店客や買上率など、これまで数値化できずに、どういった施策でお客さんがポジティブに反応するのか、勘や経験に頼っていた部分も大きかったと思います。御社のサービスを使うことで、効果測定が容易になったり、来店し購買に至らなかった来店者を特定しやすくなったりする。今まで取り逃がしていた人たちを取り込む施策を考える一助になりそうですね。

岡田:小売・流通業に関しては、そのような効果が期待できますね。

ムーギー:他の領域ではどうでしょう。

岡田:小売・流通業はもちろんのこと、弊社のサービスはすべての産業に適用できると思っています。製造業でも既に導入が始待っていますし、医療や物流などにも、進出領域は広げています。
 製造業であれば、例えば最終品の検品や製造ラインの故障予知で使えます。不良品を出荷してしまい、事故など起これば、損失額は巨額です。数千万の投資で、AIを導入した方が、ROIは高い。

ムーギー:医療は、例えば画像解析とか?

岡田:そうですね。例えば今年の6月にトプコンさんと提携しました。アイケア分野では、臨床医が検査・診断機器で撮影した画像を、医者が目で見て、疾患や合併症などの異常を検出しています。これをディープラーニングによる画像解析技術で検出するビジネスなどが、可能性として考えられます。

ムーギー:つまり、今までは医者の知見に頼っていたが、AI解析で低コストかつ正確に情報を提供すると。医者が診断にかける時間を短縮して、他の部分に時間を割けますね。

岡田:そうですね。あとは手軽さを重視したサービスの提供も可能だと思っています。医者に頼ると、病院でしか検査ができません。けれど、それがもし、家庭で済ませることができれば革命が起きるはずです。家庭での予防医学目的の使用であれば、診断結果は100%でなくてもいいんです。

ムーギー:医者の診断も100%正確な訳ではないですしね。

岡田:診断というよりも、「病院に行った方がいいですよ」というレコメンデーションが重要だという考え方です。また、AIによって業務が代替されることで、人にしかできない業務に、医者はより注力できるようになります。

ムーギー:確かに。

岡田:医療分野では「あの時、病院に行って診察してもらっていれば…」という後悔がしばしばある。重病だと、病院に行かないという判断が、大きなリスクになる。それならば、まず「病院に行くか、行かないか」の簡易的な判断を、AIが担える意義は大きいですよね。
 定期的に画像を用いて診断を行い、病気の確率が高くなった時には必ず病院に行っていただく。AIの活用は、予防医学の領域において、ポテンシャルが非常に高いと我々は思っています。

ムーギー:御社のサービスを活用できる領域は、まだまだ広がっていそうですね。

岡田:ほとんどの企業がAIを当たり前に使っていくフェーズに、もうそろそろ差しかかるなと。AIが各企業のインフラになると考えています。
 会社のミッションは「テクノロジーの力で産業構造を変革する」なのですが、まさに今は、産業構造が大きく変わる転換点です。産業内で変わっていくのもあると思いますし、異なる産業が結びつくこともある。多くの産業が融合した新しいマーケットを創造するイノベーションを我々は常に起こしていきたいと思っていますね。

AIが企業のインフラになる時代をつくる