考えて考えて、考え抜いた経験を最近していますか?すぐに、インターネットに頼っていませんか?じっくり考えることで、時間的視野が養われます。この時間的視野がない子どもはどうなってしまうのでしょうか。
46年間、教育一筋――都立中高一貫校合格者シェア52%で業界1位、都立高合格者数1位を獲得した東京都随一の学習塾「ena」の学院長である河端真一氏の最新刊『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』が発売たちまち重版。結果を出すことで証明してきた、その教え方・学ばせ方は、まさに、最強にして最高の子育て論であり、塾教師としての立場でできることではなく、家庭にいる保護者ができることをまとめたのが本書です。
本連載では、子どもたちにとって貴重な時間を保護者としてどう接するか、保護者の対応次第で子は変わるということを実感していただき、今すぐできることを生活に取り入れてください。この夏休みからぜひ取り組んでほしいことを、本書から一部抜粋し、やさしく解説していきます。

「まねる」ことも大事だが、その先の「考える」を経て、
「独自性」を出すことが大切

 現代の人は大人も子どもも、深く考えることをあまりしていません。

 たとえば、一つの問題について、10分以上じっくり考えるといったことは、テストの問題以外ではあまりないのではないでしょうか。

 現代の人が考えることをあまりしなくなったのは、インターネットの影響が大きいと思います。

 インターネットで検索すれば、瞬時に答えが得られるからです。答えが世の中にあふれているということです。検索したり、人に聞いたりして方法を知って、まねる。それだけで大抵のことはできる世の中になっています。

 人をまねることは確かに大切です。文章でも書道でも、最初はお手本をまねることから始まります。

 しかしそれは、基本を習得するためにまねているのであって、基本を覚えた後は自分なりに考えて、独自性を出すことが本来は大切であるはず

 そのためにはまねているだけではダメで、自分の頭で考えることが必要になってきます。

 考えに考えて、考え抜いて答えを出す。そういった経験が子どもには必要なのです。

 考えるといっても、「どうしよう」「でも、やっぱり……」と悩んでいるだけでは単なる堂々巡りです。そうではなく、答えに向かって建設的に考えることが大切です。

 建設的に考える際に重要なのは、シンプルにとらえることです。

 現実の問題は一つしかないということはなく、複数存在しています。

 そのなかでも最も上位にある問題について、いろいろな角度から考えて結論を出します。そうすると、下位にある問題についても自ずと解決の道筋が見えてきます。

 優先順位や階層をはっきりさせてから問題に取り組むことが、よりよい答えを導き出すためのポイントです。

 物事を考える訓練として有効なのは、いろいろな問題を「パースペクティブ」でとらえることです。

 私の塾の問題集にも「パースペクティブ」というタイトルを付けたくらい、私はこの言葉を非常に大切にしています。

 パースペクティブは一般には「遠近法」「透視図」と訳されますが、私なりの訳語は「時間的視野」です。つまり、「時間」が経つにつれて変化していく「視野」をとらえる、という意味合いです。

 言い換えれば、全体を俯瞰的にとらえ、最終的な目標に向かって一つひとつの問題に取り組んでいくという、「計画力」です。

 受験における勉強計画(カリキュラム)は普通、塾が立てるので、子どもはそれに沿って勉強するだけ、保護者も何も言わないということになってしまいがちです。

 塾は蓄積したノウハウを生かして最善の計画を提供しているわけですし、勉強する子どももそれを利用すればいいのですが、計画を人任せにしていることが子どもの主体性を奪っている側面があることも確かです。

 本来は保護者と子が一緒になって、受験に向けたプロセスを明らかにして、どの時期までに何をやるか、計画を立てることが大切です。計画を人任せにしてしまうことは、口を開けて待っているひな鳥と同じで、主体性がありません。

 時間的視野を持って計画を組み立てることは、計画表として表せるだけでなく、頭のなかで透視図を描くことになります。頭のなかに透視図を描きながら勉強を進めていける子は、考える力が身についている証拠であり、受験においても存分に力を発揮できる傾向にあります。

 時間的視野を養うものとしておすすめなのは、たとえば将棋です。

 将棋は、守りを固めながら、タイミングよく攻めていくことが求められるゲームです。盤面全体を広い視野で見るのと同時に、時間的視野で戦局を見極め、相手の動きを10手も20手も先読みしながら、自分の差す手を選んでいきます。

 頭のなかで透視図を描く訓練につながり、勉強にとってもプラスになることは多いはずです。

【POINT】

考えに考えて、考え抜いて答えを出す。それは、
時間が経つにつれて変化していく視野をとらえること。

<参考文献>
勉強ができる・できないは、遺伝や才能ではなく○○で決まる。

「自ら勉強する子」にするために親ができることとは?<佐藤ママ×河端学院長 特別対談>