どん底からはい上がる手がかり
アセスメントによって状況を把握した後、私たちは解約数を減らすための対症療法に取り組むことにしました。
一般的に「顧客の利用継続に有効」とされている方法も検討しましたが、多くは効果が数値化しにくいか、効果測定に期間を要するものでした。たとえば、優良顧客への割引特典や、購入金額に応じてのゴールド、シルバーなどのクラス分けがそれにあたります。
WOWOWの場合、「優良顧客」とは「長期加入者」を指すので、その顧客の契約期間が特典によってさらに長期化したことを証明するには数年単位の期間が必要です。またWOWOWの視聴料は月額固定なので、購入金額によって顧客を分類しても、それは加入期間による分類と同じになってしまい、分類の意味がないなどの事情がありました。
このように、リテンションやエンゲージメント(顧客と企業の親密なつながり)の施策は、個々の事業の特性を十分に考慮して選択する必要があります。
まずは対症療法で「顧客を引き留める」
最初に効果がはっきりしたのは「解約リテンション施策」でした。コールセンターにかかってくる解約電話に対してオペレーター(WOWOWではコミュニケーターと呼んでいます)がリテンション(引き留め策)を実施するのです。
当時WOWOWでは、解約の申し出はすべてカスタマーセンターへの電話のみで受け付けており、その中の一部の電話に対してコミュニケーターがリテンションを行っていました。
顧客が解約希望を伝えてくる場面が、顧客とWOWOWの最後のコンタクトポイントです。「解約リテンション施策」は、最後のそのポイントで、コミュニケーターが会話によって「解約を、留まっていただく」というものでした。
この施策自体は従来も行っていましたが、やり方はコミュニケーター任せで成功率にもそれほどこだわっていませんでした。
しかし改めて調べてみると、成功率が20%にも達するハイパフォーマーもいれば、50件受けて1件も成功していない人もいて、会話の仕方が成功に大きく影響することが推測されたのです。
(続く)