売れるセールストークには、法則が存在する

フーテンの寅に学ぶ<br />たった2分で売り切るセールス法則横田 伊佐男(Isao Yokota)
CRMダイレクト株式会社代表取締役
横浜国立大学大学院博士課程前期経営学(MBA)修了。「使えなきゃ意味がない」を信条に、使えて成果につながる戦略立案を徹底的にたたき込む日本唯一のプロフェッショナル・マーケティングコーチ。企業や受講者の課題点をすばやく摘出し、短時間で確実な成果へと引き上げる「超訳力」を駆使したマーケティング研修講座は、上場企業ホールディングス、政府系金融機関、欧州トップの外資系金融企業、意欲ある中小企業経営者等からの依頼が絶えず、これまでの受講者はのべ2万人を数える。著書に、『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社)など。2016年10月から横浜国立大学非常勤講師(国際マーケティング論)。横浜国立大学成長戦略研究センター研究員。
【CRMダイレクトHP】http://www.crm-direct.com/

 筆者は、拙著『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社)にて、売れるためのマーケティング、キャッチコピーの法則を24業種100事例の実証効果付きで紹介している。

 そこでは、人を説得するセールスレター「6(シックス)フレーム」という法則を紹介している。

 書き手(セールス)と読み手(客)は対極関係に位置する。
 セールスは「高く早く売りたい」が、客は「安く選び抜いて買いたい」と利害も真っ向から衝突する。
 それゆえ、セールスは、相手の立場ではなく自分の立場でセールス展開してしまいがちだ。

「6(シックス)フレーム」は、自動的に相手(客)の立場で入り、購買行動という目的にたどり着く魔法のフレームなのである。

具体的には、以下の順番でセールストークを展開していく。

セールスレター6フレーム
1.書き出し 好奇心をそそって続きを読ませる
2.描写や説明 提案するものをイキイキと描写する
3.動機や理由づけ 相手にとってどう役立つかを説得する
4.保証や説明 信頼性を証拠立て、信頼を得る
5.決め手のひと言や不利益 不安な気持ちにさせ、ただちに行動させる
6.結び いますぐ行動しやすくさせる
(出展:『最強のコピーライティングバイブル』ダイヤモンド社 p198)

 なぜ、この6フレームを持ち出したかというと、先程の寅次郎が2分間で見事に鉛筆を売り切ったのは、この6フレームそのままのセールストークだったからだ。

 甥がギブアップした鉛筆を寅次郎が譲り受け、セールスを始めるシーンに戻そう。

 寅次郎は鉛筆をいきなり売り込むことから始めず、じっと鉛筆を見た後、おもむろにこう切り出す(以下は実際のシーンを筆者要約)。

「(親戚縁者を見回して)オレはこの鉛筆を見ると、おふくろのことを思い出すんだ。オレは不器用だったから、満足に鉛筆ひとつ削れなかった。すると夜、おふくろが鉛筆を削ってくれたんだ。火鉢の前できちんと正座して削ってくれるんだけど、削りカスが火の中に入るとプーンといい香りがしてな。きれいに削ってくれた鉛筆で勉強せず落書きばっかりしていた。でも削った鉛筆が短くなると、その分だけ頭が良くなった気がしたもんだ。
(甥に向き直り)お客さん、ボールペンってものは便利でいいでしょ。だけど味わいってもんがない。その点、鉛筆は握り心地が一番。木の温かさ、六角形が指の間にきちんと収まる。ちょっとそこに何でもいいから書いてごらん。
(甥が渡された鉛筆で試し書きをして、書き心地に納得している)
 どう、デパートでお願いすると1本60円はする品物だよ。
 だけど、ちょっと削ってあるから30円だな。

 (甥が試し書きの手を止めて、顔を上げる)
 いいよ、いいよ、タダでくれてやったつもりで20円!
 (え、いいの?という顔の甥)
 すぐ出せ。さっさと出せ」

 20円を支払って我に返る甥が参りましたと敬服するまで、わずか2分間のセールス劇であった。

 以下に6フレームにあてはめてみよう。6フレームを身につけるための好例と言えるセールス展開だ。

フーテンの寅に学ぶ<br />たった2分で売り切るセールス法則(出典:CRMダイレクト株式会社)