「身体の医療はずいぶんと進歩して、いろんな病気が治るようになってきた。その一方で、脳についてはまだ治療法が確立されておらん病気が山積みじゃ。
たとえば、2025年に日本の認知症患者は700万人を超えると推測されているのを知っておるかね? また、脳のエイジングに伴う問題の最たるものが、アルツハイマー病じゃな。この長寿社会で、人々の健康寿命の維持を阻んでいるアルツハイマー病は、最近でも急増している。
2000年以来、アメリカでは心臓病による死亡者が14%減っているのに対し、アルツハイマー病による死は89%も増加しておる(*1)。いまだにこの病気には根本的な治療法が確立されておらん。
いまや、アメリカでは3人に1人のシニアが、アルツハイマー病あるいは認知症で亡くなっている時代じゃ。認知症への医療費や介護費用などの総額は、年間2770億ドル規模にも達しているという(*2)」

*1 Murray, C. J., Aboyans, V., Abraham, J. P., Ackerman, H., Ahn, S. Y., Ali, M. K., ... & Andrews, K. G. (2013). GBD 2010 country results: a global public good. The Lancet, 381(9871), 965-970.
*2 Alzheimer's Association (2018). Alzheimer's Disease Facts and Figures. [https://www.alz.org/alzheimers-dementia/facts-figures]
久賀谷 亮(くがや・あきら M.D. / Ph.D.)

医師(日・米医師免許)/医学博士
イェール大学医学部精神神経科卒業。アメリカ神経精神医学会認定医。アメリカ精神医学会会員。
日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。そのほか、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバーUCLA非常勤医など。
2010年、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」を開業。同院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。
脳科学や薬物療法の研究分野では、2年連続で「Lustman Award」(イェール大学精神医学関連の学術賞)、「NARSAD Young Investigator Grant」(神経生物学の優秀若手研究者向け賞)を受賞。主著・共著合わせて50以上の論文があるほか、学会発表も多数。趣味はトライアスロン。
著書に『脳が老いない世界一シンプルな方法』『世界のエリートがやっている 最高の休息法』『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』、監訳・解説書にジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』(以上、ダイヤモンド社)がある。