中東訪問がきっかけで
「国家」と「日本人」を強く意識

福岡市長・高島宗一郎氏高島宗一郎(たかしま・そういちろう)1974年大分県生まれ。大学卒業後はアナウンサーとして朝の情報番組などを担当。2010年に退社後、36歳で福岡市長選挙に出馬し当選。2014年と2018年いずれも、史上最多得票を更新し再選(2018年11月現在)。熊本地震の際には積極的な支援活動とSNSによる情報発信などが多方面から評価され、博多駅前道路陥没事故では1週間での復旧が国内外から注目された。『福岡市を経営する』が初の著書となる。

「抱いていたイメージとまったく違う」

 それが、はじめて中東を訪れたときの感想でした。正直、どこか怖い印象を持っていたのですが、実際に足を運んでみると、現地の人たちに驚くほどあたたかく接していただいたのです。

 そして、その理由は「私が日本人であるから」ということに気づきました。

 日本人だから信頼され、まわりから愛され、歴史も経済も国際社会での振る舞いも、さまざまな面が評価されているということを学生時代の旅で実感したのです。「日露戦争で日本が勝利したのはすばらしい。アジアの国が白人に勝利して私たちは勇気をもらった」「このコピー機は日本からの援助のおかげだ。他国は軍隊も一緒に入って資源を狙ってくるが、日本は必要なお金だけ出してくれる本当の友人だ」「ドラマの『おしん』が好きだ。日本人は団結して中国にもロシアにも勝った。アメリカに卑怯な原爆で攻撃されたが、今は経済でやり返していてすばらしい」などなど。

 誤解も多々ありましたが、中東の各国でまさかこんなに「日本のことが好き」と言ってくれる人がいるとは思ってもいませんでした。しかも学校の授業でも聞いたことがなかったような話を彼らのほうが詳しく知っているのです。それなのに、私は一方的に中東地域全体に怖いイメージを抱き、誤解していたことを心底恥ずかしく思いました。

 イスラエル人が歴史的な苦難から「国家」への思いを強くしたことはいろいろな書籍や映画などを通じて知られています。

 一方、学生時代に訪問したパレスチナ自治区では、はじめて「国を持たない人」に出会いました。「国を持たない人」とは、自国のパスポートがない人たちです。

 私たち日本人は、あたりまえのようにパスポートを持ち、海外に行けば「私は日本人です」と自己紹介します。海外からの侵略や脅威からは自衛隊が守ってくれ、治安は警察が守ってくれます。パレスチナで出会ったのは、そういった機能に守られない人たちでした。

 治安を維持する警察機能は、自国民ではなくイスラエルが担っています。また国家がないので、国際社会ではあくまでもオブザーバーにすぎないのです。

 過去に国を持たなかったイスラエルと、今、国を持たないパレスチナという、どちらも国を持たないことによる不自由や苦難を味わってきた人たちに出会って、私は自分が置かれている環境のありがたさを再認識しました。国家を守り、その国家の名誉を高めてきた先人に、はじめて関心を寄せることになったのです。

 また、日本人はビザがなくても入国できる国が世界トップクラスで多いということも知りました。日本人が当たり前に取得するパスポートは、先人たちが脈々と築き上げてきた信頼に足る国づくりの賜物なのです。そして私も「誇るべき日本と、生まれ育ったふるさとをもっと発展させるべく、いつか自分も政治家として働いてみたい」と強く思いました。私の人生を決定づけたのが、この学生時代のパレスチナ・イスラエル訪問でした。

次回は、夢実現のための「キャリアの作り方」についてお伝えします。12/23公開予定です)