コーポレートの実力で会社の実力が決まる
村上:コーポレートの実力によって、「できる会社」と「できない会社」に分かれてしまう。M&Aを例にとると、人がいなかったら最悪M&Aができないというケースはよくあります。「アライアンスの座組みはこうして、大企業とこういうジョイントベンチャーを組んで、レベニューシェアはこれこれで……」といった膨大な論点を前進させられる人材がいればいいのですが、それがCEOにしかできないのであれば、CEOに時間がなかったら案件が進まない。
小林:「エンジニアがいないからプロダクトを作れない」っていうのと同じようなレベル感で、「コーポレートスタッフがいないから、M&Aを活用したダイナミックなプラン思いついたけど、見送りました」みたいなことが起きるということですよね。
村上:そう。M&Aに限らず、少し特殊なアライアンスでも同じことが起き得ます。企業間連携をするときに、コーポレートがうまくまとまっていないと、実現できない。あるいは、大幅に遅れてしまう。それって本当は「AIのエンジニアがいないから、作りたいプロダクトが作れません」っていうのと同じような状況ですよね。
朝倉:話題になるスタートアップって運営しているサービスに目が向きがちだけど、よくよく見てみるとやっぱりコーポレートスタッフの人たちが極めて優秀ですよね。
小林:そうだと思います。日本の大企業のコーポレートスタッフの経験値の高さはすごい財産です。会社分割がどうとか、株主総会はどういう風に運営する、M&Aをどんな風に回す、海外拠点の管理をどうするみたいなことを、相当高いレベルでやっている。こういう人たちがスタートアップに来たら、実は活躍する場面って非常に多いですよね。そういう意味で、コーポレートスタッフの人材採用のルートが増えれば、もっと面白くなるだろうと感じますね。
村上:そうですね。
朝倉:そういう管理部門の方々は、ひょっとしたらフロント側の人たちよりもスタートアップに対して興味を持ちにくいのかもしれません。好んでリスクをとろうとするアグレッシブな性格の人たちがそこまで多くないという印象です。だから、スタートアップ側も、そうしたキャラクターの傾向を理解したうえで、大企業の管理部門にいるような人たちを、より集めやすくするための仕掛けができるといいのでしょうね。
小林:そんな面白い仕組みができたら、随分変わってきそうですね。
*本稿は、Voicyの放送を加筆修正し(編集:箕輪編集室 湯田美穂、鳥井美沙、橘田佐樹)、シニフィアンのサイトに2018年12月24日に掲載したものを一部改編しています。