なぜロボットからAIへと
会社を「ピボット」できたのか
――フラクタは、もともとは日本のインフラ点検ロボット・スタートアップの米国法人から始まりました。その事業を切り出し、MBO(経営者による企業買収)をしてAIのソフトウェア会社へと転換しました。業種も、石油からガスへ、ガスから水道へと、どんどんと変化しています。このような「ピボット」と呼ばれる手法は日本だとなかなか難しい印象ですが、なぜ実現できたと思いますか。
それも、シリコンバレーにいたおかげだと思います。シャフトで有名になってしまった分、僕には「日本のロボットが好きな人」や「日本のロボットを大切にする人」という印象がついていました。
国産ロボットを米国に展開することから始まっているので、きっと日本にいたら、「ロボットを捨てるのか」と社会的な圧力がかかって、そこから離れられなかったでしょう。
ですが、実際に現地に出向き、市場のニーズを理解して、目の前の問題を解こうとすると、今のロボット技術では解けないことがわかりました。一方で、AIで解決できることが明らかでした。たまたまでしたが、その解を見つけたときは興奮しましたね。
日本の大企業の中には、もうからなくなった祖業を捨てられずに潰れていく会社が少なくありません。僕はもともと情に厚いタイプですが、事業再生をした経験もあるので、情に流されてはだめだとわかっていました。投資家のお金を担いで、従業員も抱えていました。そこで、ピボットできたのです。
シリコンバレーにいてよかったのは、ピボットに寛容な文化があったことです。誰に相談しても、「機械学習で解けるなら、機械学習で勝負するしかない。あなたはわかっているのでしょう。投資家もわかってくれる」と背中を押してくれました。日本にいたら大失敗していたかもしれませんね。
経営の世界において、経営者個人の意思決定力というのは、世間でいわれるほどないと思います。大きな判断ができたのも、個人の力は所詮、半分ぐらいではないでしょうか。残りは、誰とつきあっているかであったり、どこに拠点を置いているかであったりと、周囲の文化や環境で決まると実感しました。