もとより労働組合は会社のヒエラルキーに縛られない民主的な組織であるから、組合員一人ひとりの意見を大切に考えなければならない。組合員は誰に遠慮することもなく自由に発言できる。

 実際に、職場ごとに行われる組合の会議、すなわち「職場会」では、好き勝手なことを言う。職制の上司には言えないような要求を職場会で熱く訴える人もいる。

 意見も要求もさまざまで、いわば十人十色。そうした職場会の議論を一つにまとめるのが職場委員である。

 さまざまな意見といっても、それぞれの価値観、生活観、仕事観を本音で語るだけなので、難しい議論になるわけではない。徹夜の議論になることもない。

 職場委員は事前に組合から配布された資料を読み込んで、自分なりの考えを整理し、明確にしておかなければならないが、参加する職場の社員たちは、職場会において要点を把握し、そこで思ったことを発言すればいい。

 職場委員は、最終的に、取り組み内容についての「職場合意」をまとめて、それを組合に上げる。組合としては、「合意」をすべての職場から取り付け、「全組合員の合意」という交渉のベースをつくることになる。

 職場委員は、このベースづくりを主体的に行う。こうしたプロセスを経験することによって、労使の歴史や関係性を学ぶことになるし、それは同時にトヨタで働くことの意味を改めて確認する作業にもなる。

 それはすなわち、トヨタウェイをより深く理解し、自分の身体に染み込ませていくプロセスでもある。