池田氏のもとには、フェイスブックやツイッターなどを通じて、「スポーツ選手としては終わりそうです。社会に出てからスポーツの世界で仕事をするには、どうしたらいいですか」など、将来への不安に直面し、戸惑う日本全国の多くの学生アスリートからの問い合わせも届くという。
「大学でスポーツをやっていても、プロになれる選手は一握り。プロに進めたとしても、その後の競争を勝ち抜いていける選手は、さらに少なくなります。ほとんどの人が一般社会に出て行く中で、大学で何を学んできたのかはとても重要な問題です」
UNIVASが範とする「全米大学体育協会(略称・NCAA)」が機能する米国では、大学スポーツにおける「教育」「学業との両立」の重要性が認知されている。学生アスリートは、しっかりと勉強で結果を出さなければ競技に参加できない仕組みがあり、学生が興味を持った科目について大学が責任を持ってサポートする体制も整っている。米大リーグ(MLB)で自由契約になった選手は、MLBが大学に入学する費用を立て替えるシステムまである。
「例えば、Jリーグで働きたいという学生がいたら、Jリーグのビジネス構造を学ぶ機会、フィールドワークをやれる機会を用意する。それは、学生アスリートと一般学生の間の接点にもなりますし、スポーツビジネスの人材育成や学べる環境をつくることにもつながりますよね。どうやって彼ら、彼女らがスポーツの世界の次の世界、次のキャリアを考える力をつけるのか。自分のやっているスポーツの周りのことを学べる環境があることは、そのきっかけとしても有効なのではないかと思います」
プロ野球のソフトバンク・ホークスでは自由契約になった選手全員にソフトバンクグループの社員としての採用オファーを出すという選手ファーストのシステムがある。ただ、球団関係者によると「いまさら営業をやれるとは思えない」「自分には無理な世界」などと、社会における自身の能力を過小評価し、断る選手も多い。
アスリートにとって文武両道は当たり前の時代に
一方で、最近では横浜DeNAベイスターズから戦力外となった小杉陽太元投手がイベント会社を設立して実業家に転身し、MLB・カブスのダルビッシュ有投手や元ロッテの里崎智也氏が球団経営やゼネラルマネジャー(GM)の仕事に興味を持っていることを明かすなど、野球選手のセカンドキャリアとして「ビジネス」を志す選手も出てきている。