「空気」の研究
『「空気」の研究』
山本七平著
(文藝春秋/1977年)
(文庫版の出版は1983年)

 昔から、「空気を読む」という表現がある。太平洋戦争中、「戦艦大和の海上特攻」など無謀な作戦の数々を決めたのも、この空気であった。空気の前では、科学的データも論理性も消し飛んでしまう。

 例えば、演劇は、周囲を遮断した空間で、演技であることを演出者と観客との間で隠し合うことで成立する。もし、歌舞伎で、女形が男性であると指さす者がいたら、退場させなければならない。そこで表現している「真実」が崩れてしまうからだ。虚構の中で成立した真実こそが、空気の正体であるという。

 旧日本陸軍の下級将校だった著者は、自らの精神を拘束しているものを探し出し、それを断ち切らない限り、空気からは逃れられないと説く。一度は読んでおきたい名著である。

(元衆議院法制局参事 吉田利宏)