物流コストの増大の直撃を受け疲弊する日本の農産物流通。農家が適正な利益を得られる変革が待ったなしな中、農業ベンチャーのマイファームが、オンライン卸売市場「ラクーザ」を今月初旬にもスタートさせることが、週刊ダイヤモンドの取材で分かった。同誌2019年3月9日号では「小規模農家こそ勝機あり 儲かる農業2019」と題して特集を掲載。変化に直面した日本の農業の最前線をレポートしている。
早ければ3月初めに、農作物流通を一変させるサービスが立ち上がる。農業ベンチャーのマイファームが、オンライン卸売市場の「ラクーザ」を創設するのだ。
ラクーザは、インターネット上で農家が出品した農作物を買い手(スーパーや飲食店)が入札で競り落とす仕組み。何といっても、農家が自由に値決めできる点が新しい。既存の規格や出荷ロットにとらわれず、農家自身が小売りや外食チェーンのバイヤーと直接、価格交渉ができる。
西辻一真・マイファーム社長は、「農家がきちんと適正な利益を得られる価格で出品し、良質な農産物ならば競り方式で価格が上がっていく。取扱量が増えてラクーザの相場ができれば、“大田の相場”を壊せる」と言い切る。
大田市場(東京都大田区)といえば、青果物で取扱高日本一を誇る巨大市場だ。ラクーザの初年度目標は、流通総額10億円と控えめではある(農家と買い手を合わせた会員獲得数の目安は4000ユーザー)。だが、「いずれ卸売市場へ流れる農産物流通の全てを獲得していきたい」(西辻社長)と、静かな野心を燃やしている。
千葉県柏市の岩立ファーム(チンゲンサイがメーン)の岩立昌之さん(38歳)は、サービス立ち上げに興味津々だ。デジタルネーティブ世代なので、スマートフォン操作にも抵抗がない。
「この20年間、どんなに資材費や物流費が上がっても、その上昇分が出荷価格に転嫁されたことはなかった。値決めをできるラクーザは魅力的だ」(岩立さん)
農家がラクーザの会員になるだけなら無料。取引の成立時点で、販売額の15%の手数料が掛かる。首都圏で直売所に置いてもらうとき(直販)の手数料が2割程度だというからリーズナブルだ。
通常の市場出荷では、中間流通コストなど諸経費を引いた「農家取り分」は売価のわずか4割程度。いかに無駄なコストが、農家の経営を圧迫しているかが分かる。
また、ロットを小さくし、テストマーケティングの場としてラクーザを活用するのも一計だ。
「チンゲンサイは加熱せずに生でも食べられるし、調理法も中華だけではないことを知ってほしい」(岩立さん)。例えば、調理法の提案などの訴求がバイヤーに利くかどうか、反応を試すことができる。