デザイナーさんは料理人

伝説の家政婦・志麻さんは「通常の料理家とは 真逆の第一印象」百戦錬磨の料理カメラマンがこっそり明かす。三木麻奈
Photographer
1977年生まれ。両親は60年代に、沖縄県八重山諸島の小さな島、竹富島に移住し、熱帯雨林と珊瑚礁に囲まれた大自然の中での生活を送る。帰京後はグラフィックデザインを学ぶかたわら独学で写真を学び、叔母がマネージャーを勤める写真スタジオに勤務、下積み時代に入る。その後同スタジオにて出会った広告写真家、湯淺哲夫に師事、2005年よりフリーランスのフォトグラファーとしての活動を開始。独特の重厚感を持つ力強い静物写真を始め、撮影を手がける料理書籍の数は多く、他に人物、紀行など、被写体とする対象は多岐に渡る。

三木:著者の人生ドラマを振り返りつつ、レシピという実用面も兼ね備えるという、こういったタイプの本は珍しいですからね。
 結局、私にできることは、「今」の志麻さんと、その志麻さんのつくりだす料理を写真でとらえることだけ。後は、志麻さんの著書の構成要素の一部として、私の撮った写真をデザイナーさんにお渡しするだけでした。
 私は「デザイナーさんは料理人」だと思っています。さまざまな構成要素が、デザイナーさんの感性にかかると、まったく違うものになりますから。

編集:そうですよね。私も世の中に無いものを創るのは大好きなのですが、デザイナーさんはどうしてもパワーハウスの熊澤さんと平本さんにお願いしようと思っていました。
 テーマは「開けてびっくり玉手箱」。どのページを開いても驚きがあって面白い。そんなデザインは熊澤さんと平本さんならきっとできると思ってお願いしたんです。その意味で、この本は相当勇気を持って創らせていただいた感触があります。

三木:Tさんが「時代が何を求めているか」ということに常に敏感な方だからこそ、あえてこういったテーマに果敢に取り組まれたんじゃないでしょうか。
 打ち合わせの時にも、熊澤さんが「料理とそのレシピを徹底して追った料理本が、出尽くしたと言って良いほど出された今、作り手の人間性を見て見たいという欲求が出てくるのは、自然の流れではないか」というようなことを仰っていて、深く納得したのを覚えています。

編集:そうでしたね。次回は、この本の原稿を初めて読んだ時の第一印象を聞かせてください。

三木:わかりました!

(つづく)