紙社会から脱却することで、何が可能になるのか?
――ハンドさんはすでに、日本発でエストニアを本拠地とするブロックチェーン企業・blockhiveと事業を進めるなど、日本との関係性も比較的深いように思います。そんなハンドさんの目に、日本のビジネスシーンはどう映っていますか?(編集部注:本記事の執筆者はインタビュー後、blockhiveの関連会社で勤務)
日本企業とは一緒に仕事がしやすいですね。人も誠実ですし、性格そのものもエストニア人とフィットすると考えています。
一方で日本は世界でもトップクラスの紙社会。印鑑の登録や、契約書締結のために費やしている管理業務によって生じる負担は小さくないことでしょう。これは、日常的に電子署名を活用しているエストニアとは、対照的な環境です。事実、電子署名を1回するごとに、1ユーロ分のコストを節約できるという試算も発表されているんですよ。
Agrelloの電子契約プラットフォームを通せば、国に関係なく、身分が証明された状態で電子契約を結ぶことができます。現在我々は、複数の日本企業と協業に向けたディスカッションを進めていますが、これが結実し、日本が少しでも効率的な社会になるための手助けができれば、と思っています。
――日本にはマイナンバー制度があるものの、利用率は低い。この現状をどう捉えていますか?
低いということを問題視している日本人によく会いますが、そもそも、すでにマイナンバーカードの仕組みがあることは、電子政府化に向けた一歩目を切っているということ。利用率が低いとはいえ、まずはそういった制度が整備されていることは素晴らしいことだと思います。また、エストニアのe-IDシステムは、130万人の小国のものとはいえ、すでに成功している事例です。スケールの差はありますが、マイナンバー制度の発展にとって参考になるものだと思っています。よく課題として挙げられるサイバー攻撃対策についても、個人情報を国の管理下におきながらも、データを分散的に保管することでサイバー攻撃の可能性に備えているエストニアの取り組みはヒントになるでしょう。