スーパーなどに買い物に行くと、小さい子が床に座り込んで泣きながら親にダダをこねている……という場面を見かけるときがありますよね。

そんな時、その親は、子どもにどんな言葉をかけていたか、覚えていますか?

本記事では、子育て中の親の悩みが幸せに変わる「29の言葉」を紹介し、発売直後に連続重版が決まるなど注目を集める新刊『子どもが幸せになることば』の著者であり、4人の子を持つ医師・臨床心理士の田中茂樹氏が、ワガママを言う子どもに、親がかけてあげたい言葉を紹介します。(構成:編集部/今野良介)

「じぶんで! じぶんで!!」

大泣きしている2、3歳の子どもと、怒っていたり困っていたりする親の姿を、ショッピングセンターやファストフード店などで、みなさんもしょっちゅう見かけると思います。

私が見かけたのは、次のような場面でした。

スーパーのレジで並んでいたとき、前に、2歳ぐらいの男の子と、その母親がいました。男の子は、小さなお菓子の袋を持っています。レジで支払い済みのテープを貼ってもらって、自分で持っていくつもりのようでした。

その親子の順番になって、母親は、男の子のお菓子の袋を取ってレジ係の女性に渡しました。女性はテープを貼って、男の子に笑顔で「どうぞ」と渡してくれました。しかし、男の子は、そもそも自分で女性にお菓子を手渡したかったようで、泣き出しました。

「じぶんで!」と。

支払いが終わって、レジから移動してからも、男の子は「じぶんで! じぶんで!」と泣き叫んでいました。母親は、なだめたり、叱ったりしていましたが、男の子の「じぶんで!」は収まりませんでした。

なんでそんなことでそこまで泣くのか、そんなに怒るのかと、大人になった私たちは思いますね。でも、子どもにしてみれば、すごくショックなことなのかもしれません。私たちは子どもの頃の気分、世界がどう見えていたかを、忘れてしまっていることが多いのです。

思っていた通りにならなかったときの悲しみは、子どもにはとても大きいようです。そして、自分の思い通りにしてくれなかった親に対して、激しい怒りや、かんしゃくが出ます。こういうとき、親は叱り続けることもあるし、鬼の形相、もしくは氷の無表情で立ち尽くしているだけのこともあります。

「母親と子ども」というペアをよく見かけるのは、小さい子を世話しているのは、まだ母親のほうが多いからでしょう。父親がもっと子どもと関わるようになれば、父親と子どものペアも見かけるようになるでしょう。

さて、私であれば、このような状況になったら、子どもではなく、親である自分の機嫌を直して、子どもを泣き止ませる。できれば笑わせる。そちらに力を向けると思います。そのほうが、親にとっても、子にとってもよいからです。

「じぶんで!」と泣きながら怒っている子には、子どもの悲しみを意識しながら、「ごめんね」と声をかけると思います。

「すべて子どもの言う通りにせよ」と言っているのではありません。たとえば子どもが何かを買ってほしいと言っている場合に、「それを望みどおりに買ってあげろ」というのではないのです。

親から見れば理不尽な要求であっても、子どもにはまだ、社会の、この世の理屈がわかりません。

わざと親を困らせようとしてわがままを言ってるのではなくて、世界が、現実が自分の思い通りにならないつらさを、一つひとつ学んでいる途中です。

成長における、1つの大事なステップなのです。

泣き叫んでいる子どもと向き合って、自分が怒りでいっぱいになっていると、なかなか切り替えられません。わがままや暴力を許してはいけないと、親としての役割が気になってきます。

そんなとき、大人は、がんばれば、気持ちを切り替えられます。
でも、それは子どもにはできないことなのです。

だからこそ、「ああ、この子は思い通りにならない現実を学んでいるんだなぁ」と、愛おしみながら向き合うのです。これは困った場面ではなく、育児の楽しみの1つなのだと。

かくいう私も、保育園に連れて行くとき、よく子どもにかんしゃくを起こされて、途方にくれました。

よくあったのは、お気に入りの戦隊モノのシャツが、洗濯中で乾いていないので、それを着なきゃ行きたくないと子どもが泣き叫ぶ。なだめても説明しても収まらない。遅刻しそうになって、自分も我慢の限界で……というパターンです。いま思い出しても、なかなかつらい時間でした。

「ダメなものはダメだと叱らないと、思い通りにならなかったら毎回泣き叫ぶ子になるんじゃないか」とか「泣いたらなんでも聞いてもらえると学習してしまうのではないか」など、子どもの将来のことまで心配する方もいると思います。

他の人の目も気になりますよね。子どもの泣き声にうるさい人もいますし、そんなネットの記事なども、頭をよぎるかもしれません。

また、「同じぐらいの子はこんなにかんしゃくを起こさないのに」とか、兄や姉と比べてこの子はわがまますぎるのではないかなどと、他の子と比べて不安になることもあるかもしれません。

しかし、成長には大きな個人差があるのが普通です。

「つらかったね」「残念だったね」と共感しながら、自分の気持ちをまず落ち着けて、しばらく子どもと向き合って、子どもが成長しているさまをイメージしながら、子どもに寄り添いましょう。そういうとき、私はゆっくり呼吸することを意識しています。

親を困らせようとしているのではなく、思い通りにいかないつらさを学んでいる。

 

「子育ての中の、このような時期は、一瞬で過ぎ去ります」

この言葉は、その日すぐには役に立たないかもしれません。それでも、「やがてこんな日を懐かしいと思う日がくるって書いてあったなぁ」と心に留めておくことで、少しは、余裕が持てるはずです。

泣いている子の関心のすべては、親に向けられています。
でもやがて、あっという間に、親以外に関心が向けられていきます。

子どもの生活のすべてを親が知っている。

子どもがいつも「お父さん」「お母さん」と呼びかけてくれる。

そういう日を懐かしむ日が、すぐにやってきます。

いま、幼い子どもといられる短い期間を、ぜひ大切にすごしてください。子どもが「現実の厳しさ」を感じて泣き叫んでいるときは、愛情を注ぐチャンスだと思って、つらい場面を、幸せな状況に切り替えてあげてください。