「本質を捉える学問」を
みんなでつくりあげる

佐宗 「数量化の呪い」って表現は面白いですね。

西條 データから構成されるのは、過去の積み上げから導き出された表層的な構造にすぎません。本質を捉えるためにデータを使うのならいいですが、今は逆になっていて、表層を把握して終わりになっています。

佐宗 そうした状況を乗り越えるヒントがドラッカーにあると?

西條 ええ。ドラッカーが今の時代もなお役立つのは、先ほどの佐宗さんのお話のとおり、複雑系である現代社会は変化のスピードが早く、変化の幅も大きいからです。本質行動学でいうところの「方法の原理」は、特定の状況で何らかの目的を達成するための手段のことを方法と呼ぶのであって、だとすれば状況と目的抜きに「正しい方法」を論じることはできない。状況と目的に応じて有効な方法を選択したり、つくったりしていけばよいというものです。

佐宗 状況や目的が変わってしまっても、その「原理」に沿って方法自体をどんどん変えていくことができる?

西條 そのとおりです。震災後もこうした原理があったから未曾有の震災に対応するチームをつくれたということがあります。こういう変化が状態の時代では、普遍性のない断片的なアプローチには限界がある。やはり本質を捉える学問をみんなでつくりあげていくことが重要です。EMSは単に授業を受けて単位取得する学術機関でもなく、権威を無批判に踏襲する自己啓発的なものでもなく、能動的に問いを立て授業や論文などを参照しつつ学び、自らを研究し、深化させるメタ大学院に位置づけています。

【西條剛央×佐宗邦威】環境に合わせて「自分を変える」が、もはやナンセンスになった[特別対談(後編)]