「マネジャーにしかできない仕事」で顧客を動かす

 そして、マネジャーは上層部の理解を得たうえで、自ら担当者とともにすべての顧客を回って、協力を要請することにしました。

 これが、非常に効果的でした。通常、よほどの問題がない限り、マネジャーが自分の担当外の現場に顔を出すことはありません。それだけに、顧客側も「わざわざマネジャーさんが来てくれた」と歓迎して、しっかりと耳を傾けてくれたのです。

 しかも、このマネジャーは「お願い」はしませんでした。それよりも、顧客サービスを向上させるために、営業スタッフの「働き方」を変えようとしていることを説明したうえで、注文のルールを改めて伝えました。そして、それを遵守してもらえれば、多くのメリットを提供することができると訴えたのです。つまり、こちらの業務を効率化するために協力を「お願い」するのではなく、Win−Winの関係になる提案をしたわけです。

 これが、多くの顧客の心に響きました。なぜなら、彼らも注文に手間を取られていることを問題視していましたし、何よりも、発注ミスをなんとか減らしたいと考えていたからです。

 そして、多くの顧客が専用端末を使うようになるとともに、専用端末をもたない顧客は注文フォーマットを使うようになってくれました。その結果、営業スタッフを苦しめていた夕方の事務処理が大幅に減少。なかには、夕方に帰社せずに、目いっぱい顧客を訪問するようになったメンバーもいました。

 発注の手間が省けるうえに、商品の到着遅延などのトラブルが減ったのですから、顧客満足も向上。さらに、訪問回数を増やすことができ、顧客との関係も以前より良好になり、売上も順調に伸びていきました。

 このように、取引先の協力が必要な場合には、協力を「お願い」するのではなく、Win−Winになる提案をすることが大切です。

 そのためには、取引先の立場に立って、「何が顧客の課題なのか?」「どうすれば、その課題を解決できるのか?」「解決できればどんな未来が待っているのか?」の3点を明確にすることです。この3つを満たした提案であれば、必ず取引先の理解を得ることができるはずです。

 そして、マネジャー自身が取引先のもとに足を運んで直接説明することによって、相手の「Yes」を引き出せる可能性は高まります。マネジャーの手間と時間はかかりますが、そのぶん、全メンバーの負担が減るので、非常に投資効率のいい仕事と言えます。そして、これこそが「マネジャーにしかできない仕事」なのです。