オープンイノベーションがうまくいかない理由

 この問題はまた、しばらく前に一大ブームとなったオープンイノベーションが、多くの組織において停滞している理由の説明にもなります。

 オープンイノベーションをシンプルに説明すれば、それは組織の内部で発生した問題に対して、組織の外部から解決のアイデアを募るという仕組みです。こう説明すれば、それはそれで当たり前に有効だろうと思われるわけですが、かつて大々的に喧伝されたわりには華々しい成功事例は報告されていません。では何が課題なのでしょうか?

 これまでの研究論文を調べてみると「失敗が許されない人事制度が壁になっている」「オープンイノベーションを推進する人材が不足している」「提携先を見つける機会が少ない」などの表層的な課題が指摘されていますが(*4)、おそらくこれらの課題が解決したとしてもオープンイノベーションはおぼつかないでしょう。

 なぜなら、オープンイノベーションによって答えるべき「問題」そのものが枯渇している状況だからです。オープンイノベーションというのは、自分たちでは答えることのできない問題に対して、外部の知識や経験を活用していこうという考え方です。

 この場合、あくまで問題=アジェンダを設定するのは自分たちであり、外部にはその解決策を提供することを求めるだけです。

 ところが、現在の多くの組織では、そもそも「解答を出すべき問題=アジェンダ」が明確になっていないことが多い。解決したい課題が不明確な状態で「何か儲かりそうなアイデアはありませんか」とお見合いを繰り返している、というのが多くの企業におけるオープンイノベーションの実情になっています。

 これは典型的なオールドタイプの思考モデルというしかありません。共感できる課題設定もないままに、いくら外部からアイデアやテクノロジーを募ったところで、大きなインパクトが生まれるわけがありません。

 一方で、ニュータイプは「重大な課題を発見し、それを解決すること」を目指します。したがって、ニュータイプにとってオープンイノベーションは単なる手段でしかなく、目的にはなり得ません。

 ところが多くの企業においては「オープンイノベーションの実現」そのものが目的に掲げられており、実際に「解きたい課題」がどこかにスッ飛んでしまっていることが少なくない。手段を目的に取り違え、イノベーションだけを追求するのは典型的なオールドタイプの思考様式と言えます。

(注)
*4 『オープンイノベーション白書 第二版』より。
https://www.nedo.go.jp/content/100879992.pdf