確かにそうです。
リーダーが「X理論」(『新版・企業の人間的側面』/ダグラス・マグレガー著/産能大学出版部/1966年)でメンバーに接すれば、まちがいなくノルマ管理の出現です。
X理論の信奉者は、「仕事に必要な意欲・能力・責任感は、オレをはじめとする一部のエリートだけのものであり、一般庶民には無縁な存在だ」という目でメンバーを見てしまいます。
私の主張する「ひと引っ張り」と、ノルマ管理との違いは、リーダーがX理論ではなく、「Y理論のスタンス」を身につけているかどうかです。
松下幸之助は、Y理論の世界を「人間の本質は、磨けば輝くダイヤモンドの原石」(『人生心得帖』/松下幸之助著/1984年/PHP研究所)と表現しました。
実にうまい、Y理論の言い換えだと思います。
普通の人間は意欲・能力・責任感を潜在的に持っているが、発揮度にはバラツキがある。
そう人間を肯定的に捉えて、潜在能力の顕在化に向けた努力をするのがY理論の世界です。
そのY理論のスタンスで、リーダーはメンバーをグイとひと引っ張りします。
修羅場に入るのは、たしかに苦しい。過去のオレもそうだった。
しかし、チャレンジ目標の達成は避けて通れないみんなの責務だ。
そう腹をくくって修羅場に飛び込めば、必ず仕事の面白さが味わえる。
オレと一緒に修羅場を乗り切ろう。
そういう思いをメンバーに、目と心で、優しく熱く伝えていく。
それがY理論のリーダー行動であり、そういうスタンスを持つリーダーに、メンバーは真摯さを感じるのだろうと思います。