社会になにかの貢献をしている自分とは?

 アドラーは、人類の進歩は「劣等感」の克服によるものだと説いています。人間が今ある状態に「劣等感」をもち、それを改善しようとしたからこそ科学が発展したわけです。「劣等感」というとネガティブで無力なイメージがありますが、ここでいう「劣等感」とは、「このままではいけない」とか「よりよいものを目指そう」というポジティブなエネルギーだと言えましょう。

 ただ、これの度が過ぎると「劣等コンプレックス」と「優越コンプレックス」が生じてしまいます。「劣等コンプレックス」は「言い訳」としてあらわれます。たとえば、「人前で話すのは苦手です」という場合は、「苦手」と言っておけば、行動しなくていいからです。そう言い訳することで、いろんなことから逃げてしまいます。

 逆に「優越コンプレックス」は、「権威づけ」となります。自分が優れているかのように行動したり、手柄を自慢したり、派手に着飾ったりといろいろです。これらのコンプレックスは、なぜ自分はそういう行動をとるのかという「目的」から考えると対処法が明らかになります(例:「言い訳をやめて行動しよう」「ありのままで良いのだ」など)。

 また、アドラーは人生の悩みはすべて「対人関係」にあると考えました。なぜなら、誰もが他者との関係に入っていくのが怖いと思っているからです。

 「対人関係」において優越性を保とうとすると競争になってしまいますので、これは好ましくありません。むしろ、「優越性」を追求しながら、自分も高まり他の人も高めていくというあり方が理想です。アドラーは他者との結びつきを「共同体感覚」と表現しました。

 劣等・優越コンプレックスという自分だけの方向から、他者への関心と貢献に視点を切り替えていけば、自分も受け入れられるし、他人も受け入れることができるという幸福な状態を生み出すことができるのです。

人生で役に立つこと
人生についての意味づけ(ライフ・スタイル)を変えれば、悩みから脱出できる。それは、自分のために生きるのではなくて、他人のために貢献していくということ。それが巡り巡って自分の幸福につながる。