カプコンの米国の不良資産を個人的に買い取り、世界的に評価されるワイナリーとして再生した同社の辻本憲三会長兼最高経営責任者(CEO)に、グローバルマーケットで稼ぐ秘訣などを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
――米国でカプコンが進めた乗馬クラブの事業が失敗し、その土地(470万坪)を個人で買ってワイナリーを始めました。試行錯誤の末、一度植えたブドウの木を全て抜いてしまったそうですね。
初期に植えた木では90点のワインしかできないと専門家に言われてね、14万本全部引き抜いてゼロからやり直しました。
それは、もし分かっていても、他にはできない方法なんです。つまりね、ブドウの木の根が下に張っていくのを邪魔する石を取り除くために、とにかくダイナマイトを爆発させて土を掘り起こすんです。
そうすると爆発音もするし、近所の家ががたがたする。隣の畑も崩れます。それは他の狭い土地じゃできないでしょ(笑)。近所に人がいる場合は、1週間、旅行に行っていただけませんかと100万円渡してお願いするとかね。フランスや日本の産地でもそこまでやっているところはないですよ。
徹底的に石を取ると、根が均一に下まで張るから同質のブドウができ、それでいいワイン造りにつながる。日本の農家が田んぼから石を全部掘り出すのと一緒です。
――さらにワイン事業を拡大するのですか。
土地を開墾すればブドウ畑(の面積)を3倍にはできます。
生産を増やさないとワインの値段が上がって飲めないワインになってしまう。ワインは足りないと、皆が飲まなくなって値段がつり上がってしまいます。
うちのワインは10年間、市場価格は高くなっていません。高いのを喜んで売り買いしている人もいるけど、飲まないものを買ったってしょうがないでしょう。
ワインは、その年に売ったものの8割が空き瓶にならないと次の年の販売に影響が出ます。ですので、いかに買って飲んでもらうかを考えないといけない。
高級ワインの底値は100ドルです。それを切ると高級ワインにならないので、そのラインはキープする。でも1本1万数千円というとやはり高い。そこで、フルボトルだけでなくハーフボトルを用意しました。瓶代は取らず、ちょうど半値で売っています。ハーフなら2人でも飲み切りやすいですしね。