企業の事業リスクを銀行が受け持つ

銀行の未来の姿に光を当てる連載「銀行の近未来」。低金利環境に苦しむ銀行業界は今、事業の「選択と集中」が迫られている。3メガバンクで3番手に沈むみずほ銀行は今後、どのような事業領域に力を入れるのか。藤原弘治頭取に聞いた。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

みずほは5ヵ年計画で「選択と集中」を進める

――みずほ銀行としての「選択と集中」をどうお考えですか。

 事業会社でよく言われる「選択と集中」と銀行の「選択と集中」では、少しネーチャー(性質)が異なると思います。私たちがやろうとしているのは、どこかの事業部門を撤退するのではなく、事業構造の再構築です。

ふじわら・こうじ/1961年6月生まれ。85年早稲田大学商学部を卒業後、旧第一勧業銀行に入行。2014年みずほ銀行常務、17年4月より現職。 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 今年からの5ヵ年経営計画では、「次世代金融への転換」を標榜し、ビジネス構造、財務構造、そして経営基盤の三つの構造改革をうたっています。

 その中で例えば、住宅ローンの取引をインターネットにシフトしています。これはリアルの店舗目線では縮小かもしれませんが、ネットを戦略的に使っていくという意味では選択と集中です。今進めている店舗改革も、店舗数は減らしていきますが、トランザクション(振り込みなどの取引)系をデジタルにシフトして質を上げていく点で選択と集中になります。

 加えて、北米の資本市場やアジアのトランザクションバンキング(資金決済)といった海外事業は、明らかに注力分野です。さらに、国内のスタートアップ企業の育成は、新しい事業領域として力を入れます。こうした取り組みが、三つの構造改革を支える大きなポイントです。

――海外事業について、課題の外貨調達に関してはどうお考えですか。

 相対的に見れば、去秋ぐらいにプレミアム(上乗せ金利)が付いた時期と比べると、今の外貨調達コストは安定しています。期や年度をまたいだときの市場のセンチメント(心理)の変化には注意していますが、調達コストの面で懸念することはないと思っています。

 外貨の量については、顧客から集めた預金の割合が貸し出しに対して7割になるように運営し、残り3割を社債などの中長期調達かインターバンク市場での短期調達で補っています。アジアではトランザクションバンキングを推進して顧客の決済口座を獲得していますが、これが安定的な顧客の預金の蓄積につながっています。

――他のメガバンクはアジアや北米のリテールバンクを買収し、それが外貨調達の一助になっています。みずほ銀行は、海外のリテール部門をどう拡大していきますか。

 確かに、海外でのリテール分野はいまだに本格化していません。ただ、ベトナムのベトコンバンクのように一部リテール分野に関与している出資先もありますし、他にも幾つかの選択肢があります。

 邦銀がグローバルのリテール分野をやるとなると、従来は必ずどこかの地場銀行を買収するという発想でした。しかし今はそうではなく、海外のIT企業やSNS企業、あるいは独自のコミュニティーやエコシステムを持つ企業と提携することで、新しいグローバルのリテール戦略を打ち出せる好機が来ているのです。

 そのような、スタートアップ企業を含めたさまざまな先進企業とどう組むかという構想は頭の中にありますので、機を見て展開していきたいです。