落とし穴(その3):
マネジャーがすべてを仕切ろうとする
マネジャーが陥りやすい3つ目の落とし穴は、「すべての管理業務を自分で仕切ろうとする」ことです。
責任感のある人ほど、他部署との交渉、会議のファシリテーション、部下の育成、進捗管理、業務改善、将来の課題形成等、すべてのマネジメント業務を1人で引き受ける傾向があります。
しかし、近年、さまざまな業務が中間管理職に押しつけられ、その負担は限界に達しているように思います。すべての業務を自分で仕切ろうとすると、マネジャー自身がつぶれてしまう危険性があるだけでなく、管理職候補である中堅社員が育ちません。
これに対し、育て上手のマネジャーは、職場の中堅メンバーと連携しながら、ビジョン(思い)を共有していました。
つまり、すべてを自分が仕切るのではなく、中堅メンバーにマネジメントの一部を任せ、理念やビジョンを共有することでメンバーの行動を方向づけていたのです。
こうした体制をとることで、中堅や若手が成長し、職場のコミュニケーションが改善し、マネジャー自身がより戦略的な業務に集中することが可能になります。
1人のマネジャーが、すべてのマネジメント業務を仕切るべきであるという考え方は、リーダーシップ研究において「英雄型リーダーシップモデル」と呼ばれていますが、その限界が指摘されています。
これに対し、複数のメンバーがリーダーシップ機能を分担する「共有型リーダーシップ」や、メンバーが主体的に動く「フォロワーシップ」は、人材の成長をうながし、職場業績を高めるといわれています。
マネジャーがすべてを自分で仕切ろうとせずに、中堅メンバーと「つながり」ながら、「思い」を共有するとき、職場における「ストレッチ(挑戦)」「リフレクション(振り返り)」「エンジョイメント(やりがいや意義)」が活性化するのです。