東京医科大学泌尿器科教授兼ロボット手術支援センター長を経て、14年に東京医科大学からの医者が多く勤務する新百合ヶ丘総合病院(神奈川県)へ、そしてこの4月に板橋中央総合病院へと移籍した。

 同病院を選んだ理由は「家から通いやすかったから」と吉岡医師は笑うが、数多くの医療機関を抱えるIMSグループの病院であれば大勢の執刀医を育てられると考えたのだ。手術実績の多い医者をさらにもう一人連れて吉岡医師がやって来た板橋中央総合病院は、4月からロボット支援手術を開始した。

 ダヴィンチは国内ではおよそ350台が導入されている。大学病院ともなれば、今や未導入はほんの数施設だ。

 導入する医療機関が急速に拡大したが、技術を持つ執刀医が足りない。全国で経験のある医者の争奪戦が始まっている。

 そんな中でロボット支援手術を多く手掛けてきた静岡県立静岡がんセンター(静岡県)は、人材輩出機関となった。同センターから東京医科歯科大学医学部病院(東京都)が直腸がんでトップの手術数を誇る絹笠祐介医師を、がん研有明病院(東京都)が山口智弘医師を招いた。

 執刀数の多い彼らが移っても、静岡県立静岡がんセンターが崩れることはなかった。全国から患者がやって来るため手術数が多く、スタッフが充実し、次の医者がどんどん育っていたからだ。他の病院へ移った医者たちは互いにつながりを保ち、最新の知見を共有している。

 執刀する医者の間に技術格差があるように、手術の舞台となる医療機関にも格差がある。

 技術を備えた医者を配し、チームとして手術をこなすスタッフをそろえ、態勢を整えることで評判を呼べば、より多くの患者がやって来る。患者が多ければ医者の手術数が増え、技術レベルが上がる好循環が生まれる。

 1台およそ2億円、3億円もするロボットを導入しても執刀医が少なければ、患者を集められずに宝の持ち腐れだ。ダヴィンチを導入する医療機関が急増し、近隣の医療機関が手術数を増やす中、手術数を減らしてしまう医療機関もある。それが続けば負の連鎖が生じる。

 だから手術を受ける医療機関を選ぶときは、治療開始以降の全てを合算した累積と最新年度の両方の手術数を照らし合わせるのがいいだろう。