かつては安定企業の代表格だったメガバンクも、
いまや数千・万人単位と大量の人員削減を余儀なくされている。
地銀の凋落ぶりは、もはや目を覆わんばかりだ。

なんだかんだと金融行政に守られ、
誰がやっても儲かるような護送船団方式のなかで安穏と過ごしてきた銀行に
市場競争へ立ち向かうまともな力量はない。

いまやAIや仮想通貨といったまったく異質の金融技術が、
銀行業務の独占に容赦なく襲いかかってきているのだ。

どんなビジネスアイデアも、本来は経営者の個人保証や担保がなくても、
アイデアそのものがお金を生み出しそうかどうか、「事業性」を評価して融資されるべき。

その事業性を審査する能力こそ銀行のコアスキルであるべきなのだが、それがない。

いまごろになって事業性評価に基づく融資の拡大を標榜する銀行も増えつつあるが、
これまで担保主義で融資してきたのだから、必要な審査能力は備わっていないのだ。

こぞって消費者金融を手掛けるも、焼け石に水。もはや八方塞がり。
不動産などの担保を確保して融資するという質屋のような銀行業務は、もういらない。

『もう銀行はいらない』を上梓した経済評論家・上念司氏が、
確かな見識と舌鋒鋭い指摘で、銀行業界を“筆刀両断”する。

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 【前回】からの続き

 銀行の社会的な役割は、「預金」「貸付」「清算」と言われます。
 しかし、これはあくまでも銀行業務の役割でしかありません。
 銀行がマクロ経済全体の中で果たすべき本当の役割は、もっと大きなものです。

 その役割とは「信用創造機能」です。

 信用とは「クレジット」のこと。
 クレジットカードのクレジットと同じで、それを「お金」と読み替えても構いません。
 わかりやすく言うと、銀行の役割とは「お金創造機能」ということです。

 誤解を恐れずに言えば、お金の量を増やすのは中央銀行(日本なら日銀)だけでなく、民間の銀行にもできます。
 もちろん、民間の銀行が勝手にお札や硬貨を造れば通貨偽造の罪になってしまいます。
 ですから、お金を創造すると言っても、物理的にお札を印刷するようなことではありません。

 民間の銀行は企業や個人への融資を増やすことで、世の中全体に存在するお金の量(マネーストック)を増やすことができるのです。

 そのメカニズムを拙書から引用して、簡単に説明しておきましょう。

 日本全体に存在する貨幣の量のことを「マネーストック」と言います。
 現在、マネーストックは日銀の発行した現金と、日銀当座預金と、すべての民間の金融機関が持っている預金の量を合計したものになります。

 マネーストックは民間の金融機関が貸し出しを増やすと増加し、貸し出しを減らすと減少します。
 そのメカニズムは簡単です。

 金融機関は顧客から預金を預かることでまず口座残高の合計を増やします。
 そして、そのお金を貸し出す際に、貸出先の企業や個人が持っている自行の口座にお金を振り込むため、さらに口座残高の合計が増加するわけです。

 なんだかインチキのように聞こえますが、これこそが銀行の「信用創造」と呼ばれる機能なのです。
 簡単に図解しておきましょう。

 X銀行にお金を預けている人が、一斉に現金を引き出さない限り、X銀行は潰れることはありません。
 仮に、B、C、D間に取引があった場合は、X銀行は口座間で電子データをやり取りするだけで決済を終えることができます。

 また、他の銀行とのやり取りがあった場合は、双方の銀行で取引を相殺し、もし不足分があれば一時的に日銀や他の銀行から借りてやり過ごせばいいわけです。
 このようなメカニズムを背景として持つからこそ、銀行が融資に積極的になれば口座の残高は幾何級数的に増えてマネーストックが増加するのです。

 マネーストックが増加すればそれだけ世の中にお金が行き渡り、景気は良くなります。
[出典:『経済で読み解く日本史 第1巻 室町編』上念司著(飛鳥新社)]