業務遂行中のマネジメントの違い
さて、これまでは業務開始前の指導でしたが、次に、業務遂行中のマネジメントを見てみましょう。
平田課長 業務を遂行している途中で問題が発生したり、部下が失敗したときには、その原因について一緒に振り返っています。さらに、業務の節目の面接では、同じ失敗をしないように部下と議論を重ね、弱点を克服するように励ましています。
育田課長 業務の進捗確認の際には、問題や失敗だけでなく「〇〇の力がついたね」「この案件はなぜ成功したのかな?」と成功についても振り返り、さらに良い成果を上げる方策を検討させています。ときに、あえて失敗させることで「どうしたら成功できるか」を考えさせ、部下の持っているポテンシャルを引き出すこともあります。
平田課長のように、問題や失敗の原因を探り、解決策を探ることも重要ですが、それだけだと部下が萎縮し、自信喪失する結果に終わってしまうこともあります。
そこで必要なのが、育田課長が行っているような「成功や上手くいったことの振り返り」です。こうした振り返りは、成功の再現性を高め、さらにレベルの高い成功のために必要となります。
さらに育田課長は、失敗を通して成功のカギを探らせ、部下の強みを引き出すことも忘れていません。
職場の運営方法の違い
最後に、職場の運営方法を見てみましょう。
平田課長 部内ミーティングは、平田課長が仕切り、自身の豊富な経験をもとにアドバイスをすることで、各メンバーの問題を解決しています。
育田課長 部内ミーティングでは、30代の中堅スタッフに司会を任せ、自身の発言は最小限に控え、何でも言える「ワイガヤ」の雰囲気をつくることも育田課長の特徴です。さらに、皆で部門のビジョンをつくり浸透させることで、メンバーの行動を適切に方向づけています。
平田課長が実施している「マネジャーが前面に出るミーティング」は、一見効率的のように見えますが、マネジャーに正解を教えてもらう受け身の場になりがちです。
これに対し、育田課長は、頼りになる中堅社員に仕切りを任せ、自分は一歩引くことで、メンバーが自由に意見を出せる雰囲気を意図的につくっています。
さらに、皆でビジョンをつくることで、思いを共有し、メンバーの行動を適切な方向に導いています。
こうした工夫によって、育田課長は、若手や中堅社員が「育ちやすい環境」をつくっているのです。