拡張型アプローチ

 新たな軸を増やす「拡張型」について、ガス会社・経理部のマネジャーは、次のようなケースを紹介してくれました。

「税務のスペシャリストを目指している31歳の男性の部下がいます。彼の強みは『分析力・情報把握力に優れている』点にありますが、有能であるがゆえに『自分でやったほうが早い』と考えてしまい、1人で仕事を進める傾向がありました。
 面談の場では『将来スペシャリストになるにしても、1人でできることは限られているので、チームで仕事を進めるスキルは欠かせないよ』と彼に説明しました。
 彼のコミュニケーション力は平均レベルにあり、もともとの強みである分析力を生かしつつ、『チームで仕事をしたり、巻き込む力』を伸ばすことが可能だと判断し、期待を込めて『税務業務チームのリーダー』に任命しました。
 なお、プロジェクト開始前には『1人で仕事を抱え込まずに、なるべくメンバーを巻き込んで、業務を任せながら仕事をするように』と、役割分担やミーティングの方法についても具体的なアドバイスを与えました。
 その後、メンバーの意見を聞き、ミーティングでは進捗を確認し、任せて育てながらプロジェクトを完遂することができました」

 このケースでは、もともと持っていた「分析力・情報把握力」という能力に、「チーム・マネジメント力」が加わり、強みが「拡張」されています。つまり、強みの軸が増えているのです。

 マネジャーが、部下のポテンシャルを探り、任せる仕事の意味を説明している点にも注目してください。