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働き盛りの「うつ」症状は

前回は、テストステロンを下げてしまう人の5つの特徴をお伝えしました。

この連載でずっと私が主張しているのは、中高年のあらゆる不調が「テストステロン不足」によるものが多い、ということを、もっと知ってほしいということです。

今回は、実際に私がみた患者さんの例をご紹介しましょう。

まずは、うつと診断された患者さんの実例です。かつて、気分の落ち込みがひどいからと精神科を受診した50代の患者さんがいました。しかし、出された薬を飲んでも改善しない。
「なかなか症状が良くならないんですけど……」と言っているうちに、どんどん薬が増え、それでもいっこうに良くならない。

そんな薬漬けの状態を心配した知人が、私の外来を紹介したのです。本人としてはあれだけ薬を飲んでも治らないのはなぜなのか、と藁にもすがる気持ちだったのかもしれません。

診察でじっくりお話を聞いてみると、症状から男性更年期が原因になっている疑いが強い。そこで、血液検査をしてみたら、やっぱりフリーテストステロンの値が極端に低かったのです。

そこで男性ホルモン(テストステロン)を注射によって2週間に1回程度補充する方法を行ったところ、ほどなく気分の落ち込みは解消し、うつの薬はやめていただくことができました。
そして、ふたたび精力的に仕事に取り組めるようになって、今も活躍なさっています。
「先生に見ていただかなかったら、私はあのまま薬漬けの状態で、暗い気持ちで暮らし続けているところでした」と喜んでらっしゃいました。

男性更年期の場合、
精神科に行っても症状は改善しない

もちろん、テストステロンとは関係がない、本当の「うつ」のケースもあります。
しかし、若いころに心の調子を崩した経験がまったくなくて、40代後半から50代になって初めて「なんかちょっとヘンだぞ」と思ったり、極端な落ち込みが続いたりした場合は、テストステロン減少を疑ったほうがいいでしょう。その場合、精神科や心療内科に行っても、治らないどころかますます悪化するだけです。

中年男性の「うつ」的な症状のうちの多くは、テストステロン不足が原因と言われています。
しかも、本当にうつ病を発症した経験を持つ方も、重ねてテストステロン低下がおきるケースだとより重症となるわけです。

けっして悪口ではなく事実として述べますが、残念ながら精神科の医師で、テストステロンの重要性を認識している人は多くはありません。

当然、血中のテストステロン値を測定することもせず、薬を見繕っているだけです。ひとつ間違えたら、どんどん症状が悪化して、取り返しのつかないことになりかねません。本当の「うつ病」かどうかを判断するためにも、血液検査をするなどして、フリーテストステロン値の低下があるかを確認してほしいと思っています。