今回の提携で、同構想の“弱者救済”という色が一段と強まった。そもそも同構想の第一弾とされ、9月6日に提携を結んだ島根銀行は、2019年3月期決算までの3期連続で本業の利益である「コア業務純益」が赤字だ。
さらに、新たな提携先となった福島銀は、18年3月期に31億円の連結最終赤字に陥り、森川英治前社長が引責辞任した過去を持つ。監督官庁である金融庁が、業績低迷を理由に非公表で業務改善命令を発出。19年3月期は5億円の連結最終黒字に持ち直したものの、19年9月中間は2億円の黒字。通期予想も同3億円の黒字見通しにとどまるなど復調の気配は見えないまま。「単独での生き残りはもはや不可能」(地銀幹部)というのが業界の一致した見方だった。
11日の発表では、両社が共同店舗を立ち上げて金融商品の販売に力を入れるほか、福島銀が保有する株式など有価証券の運用をSBIが受託するなどして、福島銀の収益力のテコ入れを図る方針が明らかにされた。
日本銀行のマイナス金利政策などで低金利環境は一向に改善されず、銀行業界は構造不況に陥っている。地銀の再編機運は徐々に高まってはいるものの、再編が具体的に進んでいるとは言い難い。
とりわけ福島銀は、業績の落ち込みが地銀の中でも著しく、早くから再編の候補に名前が挙がる存在だった。
18年に森川前社長が辞任した直後、県内最大手の東邦銀行のOBである加藤容啓氏が新社長として招聘され、両行が協調路線に動くのではないかと目された。「金融庁も支援に動いた」(別の地銀関係者)という競合地銀からトップを招く異例の人事は、福島銀の置かれた環境の厳しさを色濃く表した。
両行は今年5月にATMの相互解放の無料化を発表するなど、着々と足場を固めるような動きをしていたが、昨年の業務改善命令より1年以上が経っても提携に踏み切ることはなかった。
その一方、わずか2カ月前に「第4のメガバンク構想」を打ち出したSBIが、先に福島銀に手を差し伸べることとなったわけだ。