岸見一郎氏と古賀史健氏による共著 『嫌われる勇気』が2019年11月の増刷をもって、累計発行部数が200万部を突破した。2013年12月の発売から約6年が経過した現在も売れ続け、海外で出版された翻訳版も含めると世界累計発行部数は462万部を突破、「勇気の二部作」である『幸せになる勇気』との合計部数では、国内で262万部、世界では573万部を突破したという。
小学生から80代まで、幅広い世代に読まれている『嫌われる勇気』だが、フリーアナウンサーの柴田阿弥さんも『嫌われる勇気』のファンであることを公言している。そこで柴田さんと、著者のお二人との鼎談を2回にわたってお送りする。『嫌われる勇気』が幅広い世代に読まれ、日本のみならず世界でも読まれるために、どんな工夫をしたのか?(前編はこちら)(編集/友清 哲 写真/熊谷 章)
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より広く読まれるためにこだわった「普遍性」
柴田阿弥(以下、柴田) それにしても、アドラー心理学の本がこれほど多くの人に読まれるというのは、すごいことですよね。私の周囲を見ていても、本当にいろんな人に影響を与えてることがわかります。
古賀史健(以下、古賀) 『嫌われる勇気』では、10年後、あるいは100年後の人たちにも読んでもらうために、特定の時代を感じさせるような固有名詞はなるべく使わないよう心掛けました。もし青年が、「Twitterの投稿に全然“いいね”が付かないんです」なんて悩みを口にしていたら、向こう数年のうちに古びた内容になってしまいますからね。
1993年名古屋市生まれ。2010年9月、「SKE第4期生オーディション」に合格。14、15年の「総選挙」で15位。16年8月、SKEを卒業。フリーアナウンサーとして、毎週火・水曜の「チャント!」(CBCテレビ)、「ウイニング競馬」(テレビ東京)、「けやきヒルズ」(AbemaTV)、「Abema Prime」(同)に出演中。
柴田 たしかにそうですね。そういう近代バージョンもちょっと読んでみたい気がしますけど(笑)。
古賀 面白いかもしれないですけど、もっと言えば、海外の方々にも広く届けたかったので、とにかく普遍的な内容にまとめる必要があったんです。哲人と青年に名前を付けなかったのもそのためです。
岸見一郎(以下、岸見) 私にしても、実際に住んでいるのは京都ですが、ここに登場する哲人は“古都のはずれ”に住んでいる設定になっています。
柴田 なるほど。『嫌われる勇気』は今、どのくらいの国で翻訳出版されているんですか?
古賀 現在、24カ国で出版されています。だから、たとえば受験に関する悩みを扱うのも適さないんです。受験の仕組みや教育のあり方は国によって大きく異なるので。
柴田 読者からの反響も、やはり国によって異なるんですか?
古賀 興味深いのは、個人主義が浸透している欧米諸国よりも、人間関係に重きを置く東アジア圏での反響が大きいことです。とくに韓国でもこの本はミリオンセラーになっていますし、台湾でも数十万部単位で売れていますから。
岸見 韓国は親に従う文化が根強くて、たとえば両親から結婚を反対されたとしたら、若者はそれに素直に従って結婚を取りやめる傾向があると聞いたことがあります。そういう国だからこそ対人関係に悩む人が多く、結果的にアドラー心理学は受け入れられやすかったのではないでしょうか。
古賀 岸見先生と2人で講演させていただく際も、日本の読者が主に仕事に関する悩みを口にするのに対し、韓国の読者は親子関係や家族関係について悩んでいることが多いですよね。