なぜ先住民は「完璧な健康体」なのか
歯磨きしないのに虫歯ゼロの秘密

 そもそも私たちは、どんなものを食べるべきなのでしょう。

 日本人であれ、ヨーロッパやアフリカの人であれ、農業というものがない時代には、狩猟と採集で食物を調達していたことは明らかです。日本人が古来食べていたものというと「米」を思い浮かべる人が多いでしょうが、白米を食べる習慣など私たちの遠い祖先にはありませんでした。

 一口に言えば、人類が「食べるようにプログラミングされている」もの、人類のDNAに忠実なものです。

 私たち現代人のプログラム内容は、縄文時代に生きた祖先と変わりません。ファストフードはもちろん、多量の白米やパンや麺類、菓子、清涼飲料水など受け付けるようにはできていないのです。

 そうしたことを明確に示す、いくつかの貴重な研究があります。

 2010年に『食生活と身体の退化』という非常に興味深い翻訳本が、日本で出版されました。原著『Nutrition and Physical Degeneration』は、アメリカの歯科医師W・A・プライス博士によって書かれています。

 彼は、自分が診ている患者さんの虫歯や歯列の乱れは、その食生活が原因なのではないかと考えました。そして、それを証明するため、1930年代から世界14カ国に足を運び、その地域ならではの伝統的食生活を送っている人々と、同じ民族でありながら白人の近代的食生活に移行した人々について、口腔内の状態や顎と顔面の形態、および全身の健康状態を調査しました。

 スイスの山奥に暮らす人々、北極圏で暮らすイヌイット、アメリカ先住民、アボリジニ、メラニシア人、ポリネシア人、マオリ人、ペルー古代文明人……など、その土地ならではの伝統食は、訪ねた地域によってさまざまでした。

 たとえばイヌイットは、魚と魚の卵、アザラシの脂などが主で、マサイ族は植物由来の食品は口にせず、食事は動物の肉と血液とミルクのみというものでした。

 それぞれ、その土地によって伝統的な食事の内容に違いはあれど、彼らの多くが動物性の油脂を自然なままの形で食べていることは注目に値します。