人類は長らく糖質制限食だった!
ところが、人類が進歩するにつれて「ミスマッチ」が起きたのです。
アメリカの生物学者ダニエル・E・リーバーマンは、著書『人体600万年史』の中で「進化的ミスマッチ仮説」という概念について述べています。進化的ミスマッチとは、私たちが「良い方向に進歩していくことで望ましくない結果を得る」ことを指します。
人類は進歩によって食料の大量生産に成功し、多くの人が飢えから解放されました。これは素晴らしいことです。ところが、そうした環境の変化は必ずしも私たちの遺伝子とはマッチしておらず、そのためさまざまな病気が起きているとリーバーマンは指摘しているのです。
私は、糖尿病専門医として長い間、多くの患者さんを診てきました。そして、国内外の最新の研究論文にも欠かさず目を通してきました。そうした経験から、リーバーマンの指摘は間違いないと確信しています。
私は人類の進化を否定するつもりは毛頭ありません。医療の分野も進化を続けており、かつては救えなかった命が救えるようになりました。私はそれをとても喜ばしく思っています。
ただ、こと食事に関しては「進化バンザイ」と言うわけにはいきません。私たちの体には、遠い祖先の代からプログラミングされたメカニズムがあり、そこから逃れることはできません。ところが、農耕を覚えるという進化を遂げたおかげで、糖質を摂り過ぎてプログラムに沿わなくなるというミスマッチが起きているのです。
私は健康で長生きするために必須の食事法として、早くから「糖質制限」をすすめてきました。それに対し、あたかもキワモノの「○○健康法」と同じように捉え、反論する声もあります。
でも、考えてもみてください。人類のDNAが完成されたときの食事は糖質制限そのものだったのです。糖質制限は突飛なアイデアなどではなく、極めて論理的に人間のあるべき姿を説いているだけです。